ビジネス

2021.05.21

イーロン・マスクのライバルは、未来からトラックを「逆算」する

リヴィアンCEOのR・J・スカリンジと同社の電動ピックアップトラック、「R1T」


スカリンジが自動車メーカーを立ち上げる夢を最初に抱いたのは、高校生のときだ。しかし同じ野心を秘めた10代のカーマニアたちと違って、スカリンジは夢を実現するべく、工学を専攻する道を選ぶ。

ところが彼が描いた未来図は、マサチューセッツ工科大学(MIT)のかの有名なスローン自動車研究所に通っていた07年に変わった。スカリンジがここで、機械工学の博士号を取得し、頭の中で構想していたクルマをつくるために必要となるスキルを習得した、にもかかわらずだ。

「地政学上や気候上の問題、大気汚染やその他の問題といった、自動車から生まれる諸問題を次第に意識するようになりました。クルマが自分のなかで葛藤の源になったのです」と、スカリンジは当時を振り返る。そこで、ガソリン駆動のスポーツカー計画を捨て、電動スポーツカーをつくることにした。テスラの最初のロードスターのようなクルマだ。

09年に博士号を取得してMITを卒業すると、スカリンジは地元のフロリダ州メルボルンに戻り、後にリヴィアンとなる会社を創業した。スカリンジと彼のチームは速さを追求するEVの開発に4年を費やした。だがやがて、スカリンジはEV市場に隙間分野を見いだすようになる。それは、彼のアウトドア趣味とも重なった。すなわち、トラックと高級SUVだ。

スカリンジはまた、10年近くかけて同社の革新的な「スケートボード・プラットフォーム」を開発している。これは、電池パックやサスペンション、駆動用電気モーター、そしてそのすべてを制御するコンピュータを内蔵するシャシー(車台)である。

18年11月、リヴィアンはついにロサンゼルス・オートショーで試作車を発表した。7人乗りの電動SUVのR1S と、電動ピックアップトラックのR1Tだ。この「冒険用のクルマ」と称された2車種は、まるでレンジローバーのように頑丈で高性能な高級車なうえ、インターネット接続といった最新の装備と、いくつもの安全運転支援機能を備えている。


電動ピックアップトラックのR1T

確かに、現在のEV市場はテスラが支配している。ある試算によると、米国におけるEVの売り上げの80%近くを同社が占めている。それに、リヴィアンのR1Sは、高級電動SUV部門で競合の自動車メーカーからの激しい攻勢にも直面するだろう。
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文=チャック・タナート 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN No.080 2021年4月号(2021/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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