ビジネス

2021.05.21

イーロン・マスクのライバルは、未来からトラックを「逆算」する

リヴィアンCEOのR・J・スカリンジと同社の電動ピックアップトラック、「R1T」


EV市場はもはや1社の独走状態ではなくなっている。実際、20年代はEVの時代となりそうだ。世界の電動車の販売台数は、18年には510万台でしかなかったが、25年には9800万台、30年には2億5300万台となる見込みだ。

EVの開発には、電池パックやパワートレインといった部品の最先端研究への投資が必要になる。開発に成功している唯一の企業は、テスラだ。だが、そのテスラでさえ苦戦を強いられてきた。

「各自動車メーカーの成り立ちやつくりの違いを研究し、理解するのに、かなりの時間を費やしました」と、スカリンジは振り返る。

「事業の構築と拡張に伴うリスク、必要な運転資金について理解するのも、時間がかかりました」


2009年、スカリンジは(リヴィアン前身の)メインストリーム・モーターズを創業。

19年、スカリンジたちはリヴィアンの未来のために29億ドルを調達している。最初は、アマゾン・ドット・コムと、その他の企業が同年2月に7億ドルを出資。その2カ月後にフォードが5億ドルを提供した。同年9月には、自動車売買サイト「オートトレーダー」を傘下にもつコックス・オートモーティブから、さらに3億5000万ドルが届いた。

これだけでもスカリンジの野望を加速させるには十分なはずだが、さらに同年12月末には、資産運用会社大手T・ロウ・プライスが13億ドルを超えるリヴィアンへの投資ラウンドを主導している。

それ以前にも5億ドル近い出資を受けており、そこにはエネルギーとモビリティの分野に重点的に投資しているサウジアラビア企業、アブドゥル・ラティフ・ジャミールの投資部門、ジャミール・インベストメント・マネジメント(JIMCO)からの出資が含まれている(編集部註:21年1月には、アマゾンから追加の出資を含む、計26億5000万ドルを調達)。

問題は、それがスカリンジのEV開発の夢を実現させるうえで十分な資金なのか、ということだ。いまでこそ大手と呼べるテスラも、遠回りをしたり、落とし穴に遭遇したりしてきた。なぜ、まだ1台も車を生産できていないリヴィアンが平たんな道を進めるといえるのだろうか? 

スカリンジも簡単にいくとは思っていない。

「うまくいかないこともあるでしょう」と若きCEOは認める。そしてスカリンジは、どのような危険や障害も乗り越える自信があるという。そもそもリヴィアンは、“悪路”を走れるようにつくられているのだ。
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文=チャック・タナート 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN No.080 2021年4月号(2021/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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