失敗をポジティブに受け取る人とネガティブに受け取る人は半々いますが、今までの失敗を活かし、「目指すべきもの」と「メッセージ」を最大限に削ぎ落としてシャープにした結果、生み出せたTilt FiveはクラウドファンディングKickstarterのAR史上最大規模の成功を収めています。
──女性起業家として苦労することは?
シリコンバレーはじめ米国スタートアップ業界はいまでも「ボーイズ・クラブ」です。男性が圧倒的に優位なので、私は誰よりも働きます。Tilt Fiveの中でも私ほど働く人はあまりいません。いつかそのような努力がなくなるような未来が来ることを信じていますが、現状では残念ながら「誰よりも働く」という解決策しかないです。
──最後に日本展開について、今後の展望を教えてください。
Tilt Fiveではボードゲーム上にホログラムを出現させて、遠隔のプレイヤーも交えて楽しむゲームを提供しています。ビデオゲームとボードゲームの融合を為し得る体験を提供できるものなのですが「テーブルを囲んでみんなで楽しむ」体験は、文化により少しづつ異なるものだと思っています。米国では受けたTilt Fiveの広告が日本では通用しないという経験も持っています。よって、我々はクロスボーダービジネス戦略に長けているベンチャーキャピタルのSIP Global Partnersと組んで日本展開を考えています。
米国ではジェンダーや人種を意識させないためにARグラスやコントローラーの色を白にしているのですが、日本では別の色、形が良いかもしれないので、日本に愛される形でTilt Fiveを展開させていくことを考えています。また、我々はホログラムとARグラス、コントローラーという技術をもっていますので、日本のゲーム・コンテンツ制作者の方々と組ませていただき既存IPへの付加価値を提供し、新たな感動体験を提供していくことが日本で展開していく上では大切にしていきたいポイントです。
冒頭でARの進化はホームコンピューターがスマートフォンに進化していく過程に擬えてお話ししましたが、スマートフォンは便利ですが、人々を分断もさせました。私はTilt Five、ARを使ってまた人々をつなげたいと考えています。
人間は太古から火があるところに集まる性質があります。私は現代版のキャンプファイヤーとしてTilt Fiveを位置付けていきたいと考えています。テクノロジーが進化したことによって遠隔にいる人でも、同じ火を囲みながら仲間と繋がれるような場の提供を行なっていきます。それこそがいまからAR/XR、テクノロジー企業が目指すべきことだと信じています。
取材の最後に『私たちはアップルを超える企業になるよ』とにこやかに笑ったジェリーから、今までの失敗や挑戦をもとに現在Tilt Fiveで大きな手応えを感じていることが伺えた。ジェリー率いるTilt Fiveが着火するキャンプファイヤーが世界を明るくする日が待ち遠しくてならない。