【関連】ウッドショック禍、日本の林業が「国産材増産」に踏み切れない理由
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の木材先物価格チャートでは、昨年4月(264ドル/1000ボードフィートあたり)から上昇傾向に転じ、最新の5月17日時点で、1327ドルとなった。1年余りで5倍の価格高騰ということになる。
「ウッドショック」の波は、すでに日本にも押し寄せている。林野庁の担当者は、「昨年の秋頃から、市場に不足感が出始めた」という。コロナで需要が下がったという事情はあるものの、2020年の木材輸入額は前年比19%減にまで落ち込んだ。木材価格は、昨年一時的に下がったが10月頃、例年並みにまで戻り、この4月さらに上昇した。同担当者は「種類によって価格はまちまちだが、コロナ前と比べ全体では1.3〜1.5倍の価格上昇が見られる」という。
住宅価格には反映されず
こうした状況で懸念されるのは、住宅産業への影響だ。日本は木材の約6割を輸入材に頼っており、建材では半分の割合を占める。2000年以降、国産材の割合も増加傾向にあるが、輸入材は強度が強く、頼らざるを得ない面もある。
取材に応じた複数の住宅メーカーに、ウッドショックの影響を聞くと「価格上昇については確認している」と口を揃える。あるメーカーは「調達先とは価格交渉をしているが、住宅販売価格を値上げする段階には達していない」といい、消費者にまで影響が及ぶという事態は避けられているようだ。
一方、木材不足が生じ、調達ルートの拡充を図っているメーカーもある。担当者は「木材の供給に遅れが出始めているが、使用樹種の範囲を広げて調達するなど、新しい取り組みを行っている。供給の遅れは取り戻せる」と話す。
国産材工場はフル稼働
輸入材の不足が深刻化する中、国産材シフトが加速している 。林野庁の担当者によると「国産材の工場はフル稼働で、通常より生産体制を強化している。輸入材の代替を求めてやってくる新規顧客もいるが、供給が追いつかず、販売を断るケースもあると聞いている」という。
一方で、国産材へのシフトに懸念も示す。「住宅の梁(はり)など、荷重のかかる部分には欧州などからの輸入材が使われる。国産材に目が向いているが、例えばスギは強度が少し弱く、(国産材を使うとなれば)設計上の変更が必要になるだろう」。
林野庁は4月30日、住宅業界に対して余分な買い占めや過剰な在庫をもたないよう要請を出した。しかしメーカー側は「ウッドショックは比較的長期間続くのでは」との見方が多く、先の見えない状況だ。
生産者とっては好機?
住宅メーカーなどにとっては苦境である一方、木を伐採する業者には好機になるのではと、同庁の担当者は説明する。「国産材は、これまで安く売られてきた。今回ウッドショックで国産材も価格は上がっており、山側(木材生産業者)にとってはありがたい状況ではないか」。
高く売ることができれば、利益の幅は増え、供給のためにより多くの木を新たに植えることができる。ウッドショックは誰にとっても悪ではなく、日本の林業にとってプラスに働く可能性もある。