「灘校」で実施される特別授業 子どもの世界を広げる、その内容とは?

積極的に質問にこたえる灘校生徒たち(提供:神戸市)


「あすチャレ!ジュニアアカデミー」で生徒たちが得たものとは?


この日講師を務めた山本恵理講師 (c)parasapo
この日講師を務めた山本恵理講師 (c)parasapo

「共生社会」という言葉の意味は知っていても、それを具体的にイメージするのは大人でも難しい。しかし、「あすチャレ!ジュニアアカデミー」のように、障がい当事者である山本選手と会話のキャッチボールをしながら、具体的な話を聞くことで、生徒たちは共生社会を作っていくのは自分たち一人ひとりの行動なのだということに気づくことができたようだ。その変化は受講後の生徒たちの感想を見てもわかる。

ある生徒は「障がい者、健常者にかかわらず、同じ選択肢を持てるような環境づくりが必要だと感じた」と社会課題についての意識が芽生えた。またある生徒は「『障がい者はできないことがある』じゃなくて、『できない人が出てくる仕組み』が作られてしまっているんじゃないか? 面白い視点で社会を見ることができて楽しかった」と、新たな気づきを得たと言う。また別の生徒は「できるか、できないかじゃなくて、どうやったらできるのか? という考え方を大切にしていきたいと思った」と決意を新たにした。

今回の講座開催を取りまとめた、神戸市文化スポーツ局国際スポーツ室の上山岳史氏は、授業に参加した感想をこう語る。

「講師の山本さんの軽妙なトーク、フレンドリーさが、最初は硬かった生徒の気持ちをほぐし、あっという間の90分でした。生徒たちはパラスポーツや障がいについて、知らないことには『なるほど』と驚きとともに素直に受け止めていましたが、それを各自が頭の中で咀嚼し、最後に記入してもらった感想等で、自身の今後の目標等に反映していました。

過去にも私は、本市における中学生を対象としたオンライン版『あすチャレ!ジュニアアカデミー』の様子を見学したことがありましたが、理解力や反応力の速さは、さすが灘校という印象を受けました」

灘校では「土曜講座」を実施するにあたり、生徒には「受動的」に話を聞くという姿勢ではなく、自ら問いを見出し課題を立てられるよう「能動的」に参加して欲しいと呼びかけている。そして、この経験を将来の進路を探ったり、自分の<世界>を広げたりすることに役立ててほしいというが、今回の「あすチャレ!ジュニアアカデミー」も、まさに生徒たちの世界を広げることになったようだ。

日本トップの進学校と聞くと勉強最優先のようなイメージを抱きがちだ。しかし実際は、ただただ受験のために学業に専念させるのでなく、生徒たちの世界を広げるため、人としての成長を促すため、さまざまな学びの機会が設けられている。

教育とはこれからの時代を生きる人材を育てること、すなわち未来を作ることだ。家庭での子育てにおいても、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちと関わる機会を増やすことで、子どもの世界、可能性を広げられるのではないだろうか。

連載:SOCIAL CHANGE with SPORTS

text by Kaori Hamanaka(パラサポWEB)

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