ここで紹介するのは、すでに実践されている社会デザインの好事例10選。優れたアイデアから学べることは多いはずだ。
「思い出を残す技術」が、命を救う技術に 結核迅速診断キット(富士フイルム)
課題:喀痰採取できないと結核検査できない
開発途上国に深刻な影響を与えている結核。診断には「喀痰」が検体に使われることが多いが、特に感染リスクが高いHIV患者や、小児・高齢者は採取が難しい。
アイデア:写真現像技術を応用し尿を検体に
採取が容易な尿を検体とし、富士フイルムが写真現像技術で培った「銀塩増幅技術」を応用して簡単に操作できるキットを開発。電源や専用装置の使用は不要。
成果:途上国での実用化に向けて臨床評価中
WHOが認定する審査基準の一つに2018年12月に適合。アフリカや東南アジアなど結核患者数が多い途上国への供給に向けて、各国研究機関にて臨床評価を実施中。
水を循環させて「どこでも手洗い」を実現 WOSH(WOTA)
課題:手を洗いたいけど水道がない
手洗いは、最も効率的で安価な衛生対策。だが、手洗い機は限られた場所にしか設置できず、水の供給インフラが整備されていない開発途上国では、30億人もの人々が手を洗うことすらできずにいる。また、新型コロナウイルスの感染拡大で、いままで手洗い機のなかった場所にも設置したいというニーズが生まれた。
アイデア:水再生技術で排水を再利用
災害用シャワーなどを開発してきたWOTA独自の水循環テクノロジーを応用。膜ろ過・塩素添加・深紫外線照射の3段階の浄化システムで安全で衛生的な水を供給するドラム缶型のポータブル手洗い機を開発した。水道に接続する必要がなく、電源と20リットルの水があればいつでもどこでもきれいな水で手洗いができる。
成果:どんな環境でも衛生を徹底
2020年7月の発表後、カフェやレストラン、小売店、病院などから問い合わせが相次ぎ、約150カ所に導入が決まった。店舗の入り口などに設置することで、多くの人が訪れる場所での手洗いが可能となり、外出時も手の衛生を保てるように。コロナ禍で世界的に需要が高まっていることを受けて、米国での販売も目指す。