コロナ禍で最も打撃を受けた業界にこそ、有望なスタートアップ機会が生まれる
一見直感に反するようですが、コロナ禍で最も打撃を受けた業界にこそ、有望なスタートアップ機会が生まれる可能性が高いと私は考えています。実際、すでにいくつもの機会が新しく生まれてきています。
コロナ禍によってあらゆる業界でデジタルトランスフォーメーションが加速し、変化を拒んできた業界でさえも動きはじめました。しかし、それだけにとどまらないと私は予想しています。
旅行や小売業界などで、従来からの大手企業が痛手からの回復に専念せざるを得ない中、スタートアップならその機敏さとゼロからスタートできる柔軟性で有利に展開できる可能性があります。
また、コロナ禍の影響で人々の行動様式や、新技術等の導入、規制などに様々な根本的な変化が生じることで、ところどころに新たな機会が生まれ、新規プレイヤーが進出するチャンスになるでしょう。
ベンチャーキャピタルはますますグローバル化し、日本も例外ではない
Zoomは対面コミュニケーションの完全な代替にはならないと考えています。しかし、多くの人が想像していた以上に代替できた部分が多かったのも事実です。
投資の世界でも、一度も直接会わずに、Zoomだけで数億円規模の投資が実行されるようになりました。
おかげで物理的な距離の重要性がかなり低くなり、ベンチャーキャピタル界のグローバル化が大きく進みました。
これまではクルマで行ける距離の企業にしか投資してこなかった投資家も、今では世界中の起業家とビデオ会議を通じて交流し、国境やタイムゾーンを超えて投資するようになっています。
言語や文化の壁の問題は残りますが、このトレンドは日本のスタートアップにも影響すると考えています。
海外投資家と交流できる経営チームを作ることができれば、ある程度進んだ成長ステージで資金調達する際に、はるかに多くの資金へアクセスできるという非常に大きなアドバンテージになるでしょう。
以前は、起業チームに英語力があっても大したアドバンテージになりませんでした。多くの投資家にとって、日本のような遠く離れた場所は基本的に投資の対象外だったからです。
しかし、投資対象に含まれるようになった今なら、英語で交流できるスキルは、それを隠し持っていた起業家にとって大きな武器になり得ます。
投資する予定の業界や分野について、LP投資家やメディア関係者の両方からよく尋ねられます。しかし、Coral Capitalの投資アプローチとそもそも根本的に異なるので、なるべく回答を避けるようにしています。
私たちが重視しているのは世界が向かっている方向という視点での「方向性の正しさ」であり、その中で最大の投資機会がFintechにあるのか、ヘルスケアにあるのか、はたまた違う業界にあるのか、必ずしも明確にわかっているわけではないのです。
私たちにとってより良い判断材料になるのは、多くの場合、自分の人生を賭けてスタートアップに取り組んでいる起業家自身です。それに、どれほど入念に業界分析をしたとしても、並外れた才覚を持った起業家を見つけられなければ、全ての下準備が無駄になってしまいます。
それよりも、私たちは世界がどこへ向かっているのかを常に考え、それに合った機会が現れればすぐに掴み取れるようにしています。
ただし、未来の予想にあまり捕らわれすぎないようにし、未来を作っているスタートアップの起業家の方々をより重視するよう心掛けています。
連載:VCのインサイト
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