コロナ対策やテックパス導入、日本がシンガポールのDXから学べること

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「今回の施策で、デジタル化が効率化や安全な社会に寄与することを多くの国民が実感しました。これにより、新しいもの(デジタル)への恐怖心を抱きやすい高齢者からの理解や国への信頼感が高まったと感じています」


シンガポールのリー・シェンロン首相(Getty Images)

日本ではデジタル庁が9月から新設予定であり、デジタル先進国との遅れを取り戻すための重要な局面にある。

その日本において、デジタル化の一番の課題は「人材不足」であり、「コーディングができることも大事ですが、そこはテクノロジーがどんどん容易にしてくれます。それよりも、DXの基礎を学ぶ必要があります」と田村氏は言う。

「DXとは『孫氏の兵法』のようなものです。データにより『相手を知り、己を知れば、怖いものなし』です。その基礎を身に着ければ、官僚がエンジニアやデータサイエンティストとより良い形で仕事ができます。シンガポールは“トレイン・ザ・トレイナー(指導者育成)”というやり方でDX人材を短期間に多数育成してきました。国立シンガポール大学が蓄積してきたこの方式で日本のDX人材育成に貢献したいと思っています。

実際、リー・クワンユー公共政策大学院では、コンピュータースクールとコラボして「ジャパン・ゴー・デジタル」というトレーニング・プログラムを作っています。各国のデジタル化のケーススタディや初心者向けのデータ分析学習などがバランスよく編成されたオーダーメイドの研修プログラムです。このプログラムを通じて日本のデジタル化を支援していくべく、すでに自治体などと話を進めています」

一方、デジタル化を進めることはサイバー攻撃の機会を増やすことにつながる。つまりデータやプライバシーを守る技術、いわゆるサイバーセキュリティもの対策も同時に強化していかければならないと田村氏は指摘した。

「日本は、正しい方向性さえ理解すれば変化を早く起こせる、ポテンシャルの高い国です。シンガポールなど他国の事例から学び生かしていけば、これまでの遅れを取り戻すことは十分可能だと思います」


田村耕太郎◎GIIS(グローバル・インディアン・インターナショナル・スクール)アドバイザー、国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院 兼任教授、Milken Instituteアジアフェロー。元参議院議員、元内閣府大臣政務官(経済財政政策担当、金融担当)、元参議院国土交通委員長。早稲田大学卒業、慶応大学大学院修了(MBA取得)、米デューク大学ロースクール修了(証券規制・会社法専攻)(法学修士号取得)、エール大学大学院修了(国際経済学科及び開発経済学科)経済学修士号、米オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了。

編集=長谷川寧々

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