米国で「ブレイクスルー感染」増加か、マスク巡る新指針も要因

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米大リーグ(MLB)のニューヨーク・ヤンキースは先ごろ、所属するグレイバー・トーレス選手が新型コロナウイルスに感染したと発表した。チーム内で立て続けに確認された、8人目の感染者となる。

感染した選手やコーチたちは、すでに2回のワクチン接種を完了していた。つまり、8人ともいわゆる「ブレイクスルー感染」をしたことになる。また、トーレス選手は昨年12月に一度感染している。感染後にワクチン接種を受け、それでも再感染したということだ。

一方、ヤンキースが8人の感染を発表したのと同じ日、米疾病対策センター(CDC)はマスクの着用に関する指針を変更。ワクチン接種を完了した人は、屋内を含めたほとんどの公共の場所で「マスクを着用しなくてもよい」こととした。

CDCのロシェル・ワレンスキー所長は発表文で、接種を完了した人は誰でも、屋内外を問わず、また規模の大小にかかわらず、「マスクを着けたりソーシャルディスタンスに配慮したりすることなく、さまざまな活動に参加することができる」と明言している。

変更は適切か?


この突然の指針の変更は、まだワクチン接種を受けていない人たちにインセンティブを与えることを狙ったものと考えられる。実際、ジョー・バイデン大統領はツイッターに、「1年にわたって懸命な努力と多大な犠牲を払ってきたいま、ルールはシンプルなものとなった。ワクチン接種を受けること、それまではマスクを着用することだ」と投稿している。

だが、当然ながら新たな指針は、「実際問題として、ワクチン接種を受けた人とそうでない人をどのように見分けるのか?」という重大な疑問をもたらす。

米国は接種を完了したことを証明する「ワクチンパスポート」のようなシステムを導入していない。その中で、屋内にいる人たちの接種状況をどのように把握しろというのだろうか。

そして、さらに重大な問題がもう一つある。それは、「これは現時点で実施すべき健全な政策なのか」ということだ。
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編集=木内涼子

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