和月伸宏によるコミックが原作。幕末に「人斬り抜刀斎」の異名をもつ剣客だった緋村剣心が、明治維新後に人斬りをやめ、弱き人たちを助けるために剣を振るうストーリーだ。
映画は、2012年の1作目を皮切りに、2014年には2部作「京都大火編」「伝説の最期編」が公開された。そして今年、シリーズは完結を迎える。「るろうに剣心 最終章」として、4月23日に「The Final」が封切られ、6月4日には「The Beginning」が公開される。
1作目から10年にわたって「るろうに剣心」と向き合い続けてきた大友啓史監督、そして主演を務める佐藤健に、「ヒットを生み出すための仕事観」について聞いた。
プレッシャーがあろうとなかろうと、やるべきことをやる
──1作目が公開されたのは2012年。この10年間を振り返ってみてどんな思いですか?
大友:NHKを辞めてフリーになってから初めての仕事が、この「るろうに剣心」でした。NHKでは「ハゲタカ」の映画化や、時代劇「龍馬伝」など、大作と言われる作品はつくってきたものの、2011年に「るろうに剣心」の制作発表をしたときの反響は全然違った。「すごいものに手を出してしまったな」と思ったのを覚えています。
当初から劇場3部作でお話をいただいていましたが、我々の世界は興行的に成功しないと話が立ち消えてしまうこともある。なので、とにかく1作目を成功させなくてはいけないと考えていました。
佐藤:僕は小さい頃から、「るろうに剣心」のマンガにもアニメにも触れてきた世代だったので、「(実写化が)本当にできるのか?」と思っていましたね。でも、監督から最初に「るろうに剣心」のアクションイメージの動画を見せてもらっていたので、目指すべきものがわかった。あとは自分が体現できるように練習していくだけだなと。
実写化で人気キャラクターを演じることに「プレッシャー」があるかとよく聞かれますが、プレッシャーというのは自分の中にない言葉で……実はあまり考えたことがないんです。プレッシャーがあろうがなかろうが、やらなければいけないことはあるから。
大友:監督としては、原作に忠実であることよりも、原作に「誠実」であることを意識してきましたね。原作者の和月伸宏さんとは何度かしっかり話し合いの席を設けてもらいました。マンガと映画だと表現形式がまるっきり違うので、できる表現、できない表現が出てくる……という話を何度か重ねて、結果「お任せします」と言っていただけて。
人気作だから仕方がないにしても、丁寧にプロセスを重ねてきているので、原作と実写の「間違い探し」をされると心苦しいですね。俳優がキャラクターに「似せる」ことがゴールではないですから。実際、キャスト発表のときに「似てない」と言われた配役が、いざ公開されたら好評だったこともあります。外面を似せること以上に、俳優自身が、その世界で生きている1人の人間を、説得力のある演技で表現してくれたからだと思います。