エスターの長女スーザンはYouTubeのCEO。言うまでもなく、セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジの才能を見抜き、彼女が貸した自宅ガレージがGoogleのオフィスであった(のちにスーザンはGoogleの広告事業上級副社長に)。エスターの次女ジャネットはカリフォルニア大学医学部准教授、三女アンはGoogle創業者のセルゲイ・ブリンと結婚し、世界が注目する遺伝子検査のバイオベンチャー23andMe創業者である。
この3人の娘たちの母エスターはジャーナリズム講座を受け持つ高校教師だ。彼女が教育者として編み出したのが “TRICK”という教育法で、これはスティーブ・ジョブズ親子も受講している。では、この“TRICK”とはどう意味なのか。エスターの著書『TRICK スティーブ・ジョブズを教えYouTubeCEOを育てたシリコンバレーのゴッドマザーによる世界一の教育法』の翻訳を手掛けた関 美和氏がエスターにインタビューを行った。
──あなたは子育ての第一のゴールを「なるべく早く自立できるような教育をする」ことにしていたそうですが、「早く自立」をさせるにはどうしたらよいのですか?
まず、信頼が何を生み出すかをお話します。私は3人の娘たちのことを、生まれた瞬間から信頼していました。なぜなら、赤ちゃんは赤ちゃんなりに、親の一挙一動をじっと観察して学んでいると感じたからです。大人が考えるより幼い子どもは賢いし、周囲のことをよく察知しています。
例えば、現在YouTubeでCEOを務める長女スーザンは2歳にして母親のような役回りを率先して行い、生まれたばかりの妹ジャネットのお守り役を買って出てくれました。おもちゃを片付けたり、布おむつを畳んだり、泣いている妹をあやしたりして、忙しい私を助けてくれたのです。「本当に助かるわ」「ありがとう」との言葉をいつも伝えていたので、スーザンは自分のやっていることに誇りを持ち、心理的にも満たされていたようです。
次女ジャネットは、1歳1カ月にしてプールの端から端までひとりで泳げるようになったし、三女のアンも3歳にしてスケートリンクを滑っていました。また、幼い娘たちだけで近所にどんどん買い物に行かせてました。彼女らの力を信じて認めてあげること、そして信頼を親が言葉と行動で示すこと。子どもたちが一番望んでいるものはその二つだからです。