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──スマートシティの構想や推進において困難だったこと、また、それをどのように困難を乗り越えたのでしょうか

山口:経験から言えることは、新しいものをクリエイトする機会をたくさん作ると、どんどんやる気が出てきて目が輝いてくる。それは議員の方々も同じで、作るという作業はやはり単純に楽しいのでしょうね。自分が理想とする街づくりのアイディアを出して、前向きに実践するというマインド習慣がついたことが一番大きかったと思います。まあ強いていえば、そこまで持っていくプロセスが苦労だったかもしれません。

中村:デジタル社会形成にはマインドセットチェンジが前提です。先ほども申し上げた、トップダウンで「データを使われる」マインドではなくて、「自分と家族や、自分の地域、そして次世代のためのまちづくりに自分のデータを活用する」というマインドです。今まで日本社会はトップダウンで動くという時代を長く経験してきているので、最初から自分で企画する、作り上げるという経験をしたことがない。

だからマインドセットを変える作業に時間がかかるし、会津でスマートシティをやると言っても、最初からネガティブな返事しか戻ってこない。それを変えるためには地道な話し合いをしながらコアメンバーを増やしていく作業を続けるしかないんです。

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(会津若松 スマートシティ構想)

──スマートシティに関わることで得た気付きは

中村:僕は日本社会が持つ旧態依然とした一極集中型ピラミッド社会にいつも違和感を持っていて、早く日本をフラット社会に変えたいという思いが強かったんです。ですから2011年の震災をきっかけに地方に行ってみようと思ったのですが、実際に東京を出てみたら、地方の方がオープン、フラット、コネクティッド、コラボレーション&シェアを通して受ける恩恵が大きいことを身体で感じるようになりました。

山口:デジタルとは言っても、実際はアナログサービスを高めていくのが目的ですから、どのように人に寄り添うかということが大切になってくると思います。それから、今まで培った知見を無償で提供して、決定や実行は地元の人に任せる。僕自身は新たな移住スタイルを地元の皆さんとの共同作業を楽しみながら具現化していきたいと思っています。

──このコロナ禍で、日本全体が危機をチャンスととらえていく機運が出てきていますが、お二人のご意見は

山口:大企業が従来の企業体型を変えなければ、これから縮小する経済の中で潰されてしまうと危惧しています。だからこそ、他の産業とも手を繋いでいかなければならないし、そこで異なった文化が導入されると化学反応が起きて新しい価値観が生まれて来る。たとえばトヨタが「将来は自動車産業から徐々に脱却していく」と宣言していますよね。もちろん個々でできることはたくさんありますが、トヨタのような大企業がガラッと変わるとそのインパクトがとても大きいと思います。

中村:いま、中小企業の生産性を30%上げるという目標を掲げたコネクティッド・インダストリーいうプロジェクトを立ち上げました。今は3年目にして25%くらいまで上げられる確証をつかみ本稼働に踏切りました。それはやはりデータというファクトを出しながら伝え続けているから出てくる効果で、やはり伝え続けていかないとイノベーションは生まれないと思います。

この記事は「Forbes JAPAN 2021年06月号」に掲載されています。
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インタビュー・構成=谷本有香 文=賀陽輝代

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