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たとえば、会津若松市のエネルギーの見える化プロジェクトでは、自宅のエネルギーデータを提供すると、省エネの方法を教えてもらえます。その結果、全体で27%の省エネに繋がりました。個人レベルで省エネを心掛けることを通して、意識していないところでSDGsに参加しているというわけです。その他にも、自分のヘルスケアデータを提供することで、個人や国の医療費削減のメリットにもつなげることができます。

僕はこれを「デジタル民主主義」と呼んでいて、自分の意志で政治に参加しているのと同じことなんですね。自分が提供するデータが、どこで、どのように利用されているか分からないのは気持ちが悪いけれど、自分の地域や家族、そして次世代のために使うのなら良いという「オプトイン意識」を持つことが、スマートシティの成功に繋がると思っています。

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(会津若松 スマートシティ構想)

山口:少しだけ補足させていただくと、インターネット上のサイバー空間でデータコントロールができるID(自分を自分と証明できる個人識別符号)という概念が生まれると、今までの行政主体のデータコントロールが自分でできるようになるわけです。もちろん、私たちの生活の幸せや便利さを追求していくことも大切ですが、長期的な観点から未来創りもしていかなければならない。

そのために私たちは、今の小学生や中学生が現役世代になる30年後の社会を考えて、「環境を用意するだけでレールは敷かない」という方針で、彼らにもステークホルダーとして参加してもらいながら未来の街づくりに取り組んでいるところです。

──地域だけではなく企業も「これからは個の時代」と言われている。ただ、その個の集積たる「多様性」を取りまとめるのは簡単ではなさそうです

中村:現在、会津スマートシティには73の企業が参加していて、その取りまとめは確かに大変なことです。それぞれ異なったサービスの下に、全てが同じ方向を向いていなければならないからです。デジタルで「ボトムアップ」と「トップダウン」の両方を推進しなければいけないのがスマートシティで、10年後以上先のビジョンを明確に示さなければならない。

もちろん、細かい部分は次世代からの意見や提案で変わっても良いのですが、例えば「会津で発生したデータを会津と共有することに合意する企業しか企画に参加できない」などの厳しいルールもあって、それは市民が自分の街のためにデータを出すというオプトイン方式を実践しているからなんです。これからのビジネスは「SDGsを本気で追究するESG」でなければならない。

さらに「企業としての責任(CSR)を第一に考えたビジネス展開をする」という方針を理解し、基本的なルールやビジョンを共有できる人や企業だけを集め、まとめるようにしています。

山口:たとえば、そこに住まう人たちの共通のゴールたる「幸せの在り方」について、多方面から意見を伺い、基本理念を確立する作業が大切だと思います。そして、私たちもその理念原則に賛同して頂ける企業だけを誘致するという方針で動いています。画一的な幸せはではなく、地域ごとの幸せ度を理解し、賛同する人たちが移動を開始するわけで、それが「私たちが目指すローカルSDGs」。課題の抽出から解決までを市民の手で推し進めて行く環境作りをしたいと思っています。

インタビュー・構成=谷本有香 文=賀陽輝代

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