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2021.05.20

西洋への憧れは過去のもの? ブランド信仰と植民地主義の幻影

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厳しい表現をすれば、人々がかつて憧れた文化やブランドの化けの皮が剝がれてきています。そうかと言って、何かに憧れるという人の気持ちが消滅するわけではありません。その気持ちに安易に乗じる商売、先のハイエンド企業の企業価値に占めるブランド価値の比率に沿えば、同業一般企業との差となる20数%に胡坐をかいた言動が批判の対象として晒されているのです。

この20数%に依拠したビジネス自体がなくなることはないでしょう。しかし、このおよそ30年間、ラグジュアリー領域に君臨してきたプレイヤーたちが淘汰のタイミングにきているのは確かだと思われます。とどのつまり、20数%を構成する要素に入れ替えが生じるであろうということです。

例えば、19世紀のパリにあった貴族性に基づくブランド価値が減じる可能性が高く、インクルーシブへの本気度が考慮される部分が多くなる、ということになります。消費者は文化創造や倫理浸透のための先行コストとして20数%を受け入れます。

ラグジュアリーや贅沢品の歴史を紐解くと分かりますが、権威のある人たちやお金持ちが独占的に所有や消費していたものが、時代の推移と共に一般の人に普及していくと、憧れの対象ではなくなり、そのステイタスは失われ、価値が落ちていきます。しかし、さらに年数を経ると、そうしたものが何らかの要素を刷新し価値あるものとして復活してきます。

その意味で、文化圏を問わず、ラグジュアリーのスタートアップが参入するに絶好のチャンスが到来しています。ラグジュアリーという領域は時代を超えて常にありながら、その表現、対象、評価のされ方は変化していきます。「新参者」を受け入れる余地も時代次第。よって、旧来ラグジュアリーの要素がいつの日か、再び評価されることもあり得るでしょう。

連載:ポストラグジュアリー 360度の風景
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文=中野香織(前半)、安西洋之(後半)

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