ヤングは、人とのスキンシップが健康上のリスクとなってしまった今、その穴をペットが埋めてくれる可能性があると語っている。「ペットは何らかの方法で人の役に立っているはず。多くの人がペットを飼っているのもそのためだ」
動物が人間の健康増進に役立ち、健康上のリスクや孤独感も緩和できる可能性があることを示す証拠は増えている。「私たちは孤独が問題だということを認識している。動物がそれを緩和できるのだ」(ヤング)
英国で5926人を対象に調査を行った研究者らもこの点に気づいた。オープンアクセスジャーナル「PLOS One」に昨年9月に掲載された調査では、調査対象者のうち90%近くは少なくとも1匹のペットを飼っていて、ペットの飼い主の86.5%は最初のロックダウン(都市封鎖)時に動物が感情的な支えになったと述べていた。
同調査ではペットを飼っていない多くの人が加味されていなかったものの、ペットの飼い主らはペットを飼っていない人と比べ、心の健康の悪化の程度が穏やかで、孤独感の上昇も小さめだった。
ただし、人間とペットの関係性はいつもメリットをもたらすわけではない。人と動物の交流に関する研究に携わり、米国立小児保健・人間発達研究所(NICHD)の小児発達・行動部門と小児成長・栄養部門でプログラムディレクターを務めるレイラ・エスポシトは「実際はもっと微妙だ」と述べている。
知らない犬を数分間なでることは、長年飼っているペットを抱き締めるのと同じ効果をもたらさないだろう。しかし科学者らはそれでも、人間と動物のどのような触れ合いが人間の健康や幸福、また動物の健康や幸福に最も有益なのかを見極めようとしている。
しかしヤングは、ペットと人間の関係性に関する調査からは今のところ、健康や幸福を向上させるような指針が示されていると考えている。ヤングと同僚らは、特定の医療現場でペットの支援プログラムを活用することで、患者の生活の質や治療結果を改善できる可能性を示唆している。
「孤独感は、さまざまな健康や精神的な問題の大きなリスク要因であることが分かっている。また私たちは、動物との触れ合いが孤独感を緩和する役に立つことも理解している」とエスポシト。
ペットは少なくとも、ストレスの多い時期に安らぎをもたらすことができる。エスポシトは「新型コロナウイルス感染症が流行してからペットを飼い始める人が急増した」と述べ、「これは人間同士のスキンシップが推奨されていないこの奇妙な時期に、人間と動物には絆を結び、喜びを感じ、前向きな関係を築く力があることを裏付けるものだ」と説明した。