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MOTION GALLERY代表 大高健志 パラブラ代表取締役社長 山上庄子 precog執行役員兼広報・ブランディングディレクター、「THEATRE for ALL」プロジェクト統括ディレクター金森 香  

多様化社会に求められるコンテンツのバリアフリー化とは何か―

オンライン劇場「THEATRE for ALL」を運営するprecogディレクターと、連携して事業をドライブするパートナー企業2社の代表が語る。


金森 香(以下、金森):いま、このコロナ禍により数々のステージパフォーマンスが中止・延期になっています。

コロナが理由で映画館や劇場に通えなくなった人、障害や疾患があったり、子育て中などの理由でもともと出かけづらかった人、また芸術に対して「難解さ」がバリアとなってなじめなかった人などに対し、開かれた劇場を目指そうと立ち上げられたのが「THEATRE for ALL」というプロジェクト。

これは、演劇・ダンス・映画・メディア芸術を対象に、日本語字幕や音声ガイドのほか、手話通訳、多言語対応などを施した日本初の動画配信サービスでして、演者や舞台関係者の作品発表の機会を保持し、離職をくいとめるといった目的ももっています。

初年度の2020年には文化庁の「文化芸術収益力強化事業」に採択されましたが、山上さんと大高さんには、当初よりご相談をしていましたね。

山上庄子(以下、山上):きっかけはパンデミックでしたが、時代の流れとして、いままさにそういうことを考えなくてはいけない時期だと思っていました。

パラブラは映像作品に字幕と音声ガイドをつけるサービスを2013年から提供している会社です。

日本では年間1000作以上の映画が封切られますが、そのうち、バリアフリー対応ができているのは 100本ほどしかないんです。

また、私たちは映画映像専門でやってきましたが、もっとコンテンツを拡げていきたい、方法論としても拡大したいと思っていた時期でもあり、大いに共感しました。

大高健志(以下、大高):ぼくは20年にコロナ禍で苦しむミニシアターや書店、小劇場のためのエイド基金をクラウドファンディングで立ち上げました。

コロナ禍によるダメージから文化施設を守り支えようとする活動に全身全霊で取り組んでいた一方で、コロナ禍とは関係なく、身体的なハンデや距離的な問題で物理的に劇場や書店まで行けない人もいるという事実にも気付かされます。

そのためにコンテンツ自体をバリアフリー化して配信するというサービスには大きな可能性を感じました。



山上:パラブラでは、映像作品をバリアフリー化する際に、その映像作品の制作者と、障害のある当事者、そして私たちの3者が一堂に会するモニター検討会を行っています。

これは、制作者の意図をくんだ字幕や音声ガイドを制作するためのものですが、字幕や音声ガイドの制作を通して改めて作品に向き合う中で、理解が深まったり、新しい観点が得られたり、制作者にとってもそれまでは気づかない新しい発見があるようです。

金森:「THEATRE for ALL」でもこのような検討会や、事後の感想シェアのワークショップなど、対話の場を生みだす仕組みを積極的に取り入れています。バリアフリー化を図ることで、制作者の意図をより深くくみ取る、当事者の視点を知ることは目からうろこが落ちるようなプロセスでした。

また、クリエイターや制作者サイドとしては、ひとりでも多くの観衆・聴衆が欲しいと思っているはずなのに、バリアフリーを図らないことで作品を届ける範囲を狭めてしまっているのはもったいないな、とも。

そもそも向き合うべき社会の姿をどう認識しているのかという問題でもあり、視覚・聴覚障害のある方への回路を開くことは、今後の作品製作の一貫としてあるべきものでしょう。



大高
:「THEATRE for ALL」はコンテンツだけではなく、作品を感じたり、解釈の手助けとなる「ラーニング」や「体験型ワークショップ」も配信していますね。これらは障害の有無にかかわらずビジネスパーソンにとっても大きな気づきの場となるのではないでしょうか。

というのは、いまダイバーシティやインクルージョンという言葉に注目が集まっていますが、少し観念だけが先走りしているというか......「THEATRE for ALL」を視聴することで、知らぬ間に自分がマジョリティ視点に立っていたことに気づくんですね。

社会の見え方も変化していくのは、ぼく自身にとっても大変学びのある経験でした。

金森:現在、動画の見放題と年間でさまざまな体験が得られる支援会員(年額30,000円)や「THEATRE for ALL LAB」という月額制の会員制コミュニティも始動しており、クローズドの講座やワークショップ、座談会に参加していただきながら、多様なコミュニケーションデザインについて議論していく場づくりにも取り組んでいるところです。

山上:バリアフリー化については共通した「正解」があるわけではないと思います。対話する場が生まれ、そこから創造していくことはとても大切ですね。

大高:今後、ビジネスパーソンにとっても、事業を展開するうえで、バリアフリー視点をもつ、多様化社会を視野に入れることが不可欠であることは言うまでもありません。「THEATRE for ALL」のイベントやワークショップ参加が、その一助となってくれることを期待しています。




2020年に文化庁「文化芸術収益力強化事業」に採択された「THEATRE for ALL」は、多彩なコンテンツをバリアフリー対応、多言語翻訳に取り組むオンライン劇場。イベントや講座から多様性について考えることができる対話型コミュニティ「THEATRE for ALL LAB」は月額1,000円から参加可能。作品見放題とセットになった支援会員(年額30,000円)も5月半ばにスタートした。


THEATRE for ALL

https://theatreforall.net/


金森 香(かなもり・かお)◎precog執行役員兼広報・ブランディングディレクター、「THEATRE for ALL」プロジェ クト統括ディレクター。英国の大学を卒業後、出版社「リトル・モア」勤務を経て、2001年ファッションブランド「シアタープロダクツ」を設立。20年現職に就任。

山上庄子(やまがみ・しょうこ)◎パラブラ代表取締役社長。大学在学中より下高井戸シネマでスタッフとして勤務。NPO法人国際マングローブ生態系協会研究員を経て、2011年より映画映像の字幕・音声ガイドを制作するパラブラの立ち上げに携わる。17年より同現職。

大高健志(おおたか・たけし)◎MOTION GALLERY代表。大学卒業後、外資系コンサルティングファームにて戦略コンサルタントとして、事業戦略立案・新規事業立ち上げ等のプロジェクトに従事。その後、東京藝術大学大学院に進学。2011年クラウドファンディングプラットフォーム「MOTION GALLERY」設立。

Promoted by THEATRE for ALL/ photograph by Kenta Yoshizawa / text and edit by Miyako Akiyama /Special thanks to MIDORI.so OMOTESANDO

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