コロナ対応で勝利「スコットランド独立派」に待ち受ける難題

スコットランド民族党 ニコラ・スタージョン党首(Jeff J Mitchell/Getty Images)

英国はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドという4つの非独立国家で構成されている。サッカーやラグビーなどのスポーツのファンならば、ご存じの方も多いだろう。その一つ、スコットランドで6日に行われた選挙で、イギリスからの独立派が議会の過半数を占めた。

英国からのスコットランド分離独立を掲げる自治政府与党のスコットランド民族党(SNP)が129議席のうち、64議席を獲得。単独過半数には1議席届かなかったが、同じく独立賛成の立場を取る緑の党が8議席を獲得し、両党合計で72議席を確保した。

選挙ではSNPのスタージョン党首(自治政府首相)の新型コロナウイルスの感染対応が支持されたとみられる。同首相は「驚くべき結果」などとコメント。2014年に次ぐ2度目の住民投票の計画を推進し、独立の是非を問う考えを明らかにした。

14年に実施された住民投票では、独立が反対多数で否決された。賛成票が全体の44.7%だったのに対して反対票が55.3%。これでいったんは独立へのムードが後退したかに見えたが英国の欧州連合(EU)離脱、いわゆるブレグジットの是非を問う国民投票を機に独立への機運が再び、高まった。

ブレグジットの国民投票前のキャンペーンで離脱派はEUの旧東欧諸国を中心とする移民の大量流入の問題を最大の争点に据えた戦略が奏功。「病院は人であふれ、満足な診察が受けられない」「学校には英語を話せない人がいっぱい」などと不満を募らせていた国民の心をくすぐった。しかし、スコットランドは他の地域に比べると移民の割合が低く、「親EU」派も多い。離脱派の作戦もスコットランドでは空振りに終わった。

歴史をさかのぼれば、スコットランドは18世紀にイングランドと統一されるまで独立国家だった。それだけに、独自のアイデンティティを大切にしようとの意識が強い。しかも、おひざ元のスコットランド沖には北海油田があり、権益の大半が懐に入れば英国政府から経済面での自立も可能、と一部の独立派は考えている。

スタージョン党首は「当面、住民投票を実施する予定はない」としており、コロナの封じ込めを優先させる意向。一方で、「スコットランドの人々の将来を選ぶ権利を阻害することは、民主主義としてまったく正当化できない」などと言及した。

この発言は14年の住民投票を「1世代に1度」などと位置付け、2度目の投票実施に難色を示す英国のジョンソン首相らをけん制したものだ。スタージョン党首はコロナ終息後の住民投票実施や独立後のEU復帰に意欲をみせる。
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文=松崎泰弘

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