経済・社会

2021.05.15 07:00

コロナ禍から復活しつつある韓国経済、今後の成長に期待も


ここ数十年の韓国は、家電製品、デジタル機器、石油化学製品、半導体、ポップカルチャーの輸出のリーダーとなることで、懸念されていた「中所得国の罠」を克服した。近年の韓国政府は、これまで自動車や船舶が中心だった経済の多様化を進めてきた。文大統領は成長の原動力を、輸出から、イノベーションやサービスに切り替えることに取り組んできた。

現政権はとりわけ、経済の活力を財閥からスタートアップに移すことで、国内のビジネスカルチャーに創造的破壊を引き起こし、新たな雇用と富を生み出すテック業界の「ユニコーン」を育てることに力を入れてきた。問題は、経済力の強化を訴える大統領が、これで3代続いていることだ。

最初に就任した李明博(イ・ミョンバク)は、2008年に大改革「ビッグバン」を公約に掲げて青瓦台(韓国大統領官邸)入りした。しかし、この試みはあっけなく頓挫した。振り返ってみれば、かつてヒュンダイグループのエンジニアリング・建設部門でCEOを務めた人物に、財閥の経済力を削ぐことを期待したのは賢明とはいえなかった。李はのちに収賄などの罪で有罪となり収監された。

李の後継者である朴槿恵(パク・クネ)は、2013年に「成長・雇用・分配の好循環を特徴とする経済システムの確立」を謳って大統領に就任した。「少数の大企業と政府が主導する成長には限界がある」というのが、朴の指針となる考え方だった。

朴政権の誕生は、歴史的にみて興味深い。1960年代から1970年代にかけて財閥システムを構築したのは、誰あろう彼女の父で独裁者の朴正煕(パク・チョンヒ)だった。財閥は、韓国が戦禍から立ち直るのに不可欠だった。しかし時が経つにつれ、財閥はますます強大化し、経済の活力の大部分を独占するようになった。そして政府にとっても、ほとんど制御不能の存在と化した。

朴は、財閥を統制するどころか、財閥に取り込まれた。彼女は2017年に弾劾され、収賄と職権濫用の容疑で逮捕された。実際、朴の失脚の原因となったものと同じスキャンダルによって、サムスングループの後継者と目されていた李在鎔(イ・ジェヨン)も収監されている。

2017年に大統領に就任した文在寅は、韓国の経済モデルの民主化を公約に掲げた。ドナルド・トランプ米大統領が「トリクルダウン」経済に取り組んだのに対し、文政権は、法人税や最低賃金を引き上げ、経済改革をはかる「トリクルアップ成長」の方針をとって有権者の支持を得た。

韓国が再び成長している今、文大統領は、経済をつくり直すという困難な課題に、少なくとも着手するというチャンスを手にしている。彼がこのチャンスを生かせれば、韓国は今後も、否定派の鼻をあかして、より急速な経済成長を実現できるだろう。

翻訳=的場知之/ガリレオ

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