ビジネス

2021.05.17

世界のトップクリエイターに尋ねた「ビジネスにおけるクリエイティブ」の現在

Whatever CCO 川村真司


David Lee デビッド・リー Squarespace, CCO


A1:クリエイティビティは学習されるものでなく、企業カルチャーのDNAに最初から組み込まれているものです。私たちの製品とブランドには卓越したクリエイティビティがありますが、それらは同時に、自分たちがデザインしたオフィス、育んだ内部環境、採用者にまでおよんでいます。

A2:優れた才能は、優れた人間性に宿るもの。私たちのクリエイティブはとても謙虚で、自分らのエゴを見せません。また、従来の広告エージェンシーの世界とは異なり、私たちにはスピーディにコラボレーションする創造的な文化があります。

A3:クリエイティブな人たちは、素晴らしい仕事に打ち込む時間が最も幸せです。その瞬間が日常的に訪れる環境を用意します。クリエイティビティを発揮できる各種ツール、アイデアをプロトタイプ化する工作室、撮影・ディレクション用のスタジオなど、社内に広範なコンテンツ作成機能を備えています。私たちの製品はDIYなのです。

A4:かつて私は夜型でしたが、今は朝型に変わりました。朝には感覚が鋭くなり、最高のアイデアが湧いてきます。午前6時から10時までが私にとってクリエイティブのゴールデンタイム。長時間働くのはクリエイティブにとって逆効果です。なぜなら、新しいアイデアはそれを期待していないタイミングに限って訪れるものだからです。

高い評価の自社CMも制作


数々の広告アワードを受賞してきたデビッドも、エージェンシーサイドからビジネスサイドに移った人物。NYに拠点を置くSquarespaceは、コーディングを必要とせずにWebサイトやECショップを開設できるプラットホームを提供しています。プロダクトがすでにクリエイティブにフォーカスしていますが、特筆すべきはクリエイティブのレベルの高さ。スーパーボウルで放映するクオリティの自社CMを、彼が率いるインハウスチームが企画から制作までこなしてしまう。組織全体のクリエイティブの底上げが、ひいてはブランドイメージの確立につながっています。

Mark Pytlik マーク・ピトリク Stink Studios, CEO


A1:クリエイティブがよりビジネス志向になるにつれ、ビジネスもよりクリエイティブになります。優れたブランドこそ、クリエイティビティとハンドクラフトを重視してコミュニケーションします。

A2:最良の採用ツールは、正しい仕事成果。常に世界に対して何を送り出すか、それをどのように提示するかに注意を払います。クリエイティブに優しく、素晴らしい仕事をするのに役立つ企業文化を築くため、雇用をフリーランサーとフルタイムによる小さなネットワークに移行しました。

A3:斬新な組み合わせからクリエイティビティは生まれます。ありえそうもない人々の協働が、時に驚くべき結果をもたらします。仕事へのインスピレーションを共有し、互いに教えあう場をつくろうとしますが、忙しいと後回しに。それが皮肉なことに、最もそうした場が必要なタイミングです。

A4:クリエイティビティを感じられない場合、過度な情報に接しているもの。そんなときは携帯電話をオフにし、しばらく天井を見つめ、瞑想し、ヘッドホンなしで散歩することにしています。

帰ってきたCEO


2009年にマークが創設したStinkdigital(現Stink Studios)はGoogleやSpotify、Twitter、ナイキなどの有名クライアントを抱えるグローバルなクリエイティブスタジオ。元々はプロダクションだったStinkが、エージェンシーからプロダクションワークを受注するのではなく、クライアントと直接仕事をするために立ち上げたチームです。彼自身は一度Stinkを辞めて、Spotifyでグループクリエイティブディレクターを経験した後に戻ってCEOになりました。
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文=神吉弘邦 写真=大中 啓

この記事は 「Forbes JAPAN No.080 2021年4月号(2021/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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