ビジネス

2021.05.19

やっぱりテレビの伝え方が一番伝わる理由

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図解表現は「見慣れたもの」を使う


以前私の会社で、ある不動産企業の新卒採用向けVTRを制作したことがあります。この企業は、「自社の新卒採用は狭き門。生半可な気持ちを持った学生はこないほうがいい!」という方針を打ち出し、志の高い学生たちの採用に成功しています。

その方針を社長のコメントやナレーションを使ってVTRにしました。そのコメントやナレーションを際立たせるためにある図を入れることにしました。

それはピラミッド型の図で、「当社に入社できる新卒は、ピラミッドの頂のほんのひと握りである」ということを、より印象づけるための狙いがあります。これ、テレビでもよく見る図ですよね?



相手の視覚を利用し、直感的に訴えることができるので、現在でもよく使われる手段として君臨しています。このように、資料などに図をちょい足しすることは、情報をより印象的に伝えるために有効な手段です。

と、ここまではよくある話ですが、実は資料作成の際に図を活用することには大きな落とし穴があるのです。

よく、パワポのプレゼン資料や報告書に、散布図やレーダーチャートなど複雑な図を使用する人がいます。できるだけ詳細にわかりやすく伝えたいという配慮なのでしょう。しかし、あまり凝った図を入れると、逆に伝わりづらくなってしまうという現実をご存じでしょうか。

先ほどのピラミッドの図を見て、「よくあるやつじゃん」とがっかりした人も多いと思います。しかし、そこにポイントがあるのです。

このピラミッドの図、番組だけでなく広告や資料にもよく出てくる「見慣れた」図ですよね? 一瞬、「こんなの使ったら、ありきたりだと思われる」と、使うのを躊躇するくらいありふれた図です。しかし、この「見慣れた」というのが大きなポイント。

人は見慣れたもの、聞き慣れたものについては、頭を使わず、直感的に内容を認識することができるのです。

ですから、資料に図を使う際は、先ほどのピラミッドや棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフなど、よく見る「ベタな表現」を積極的に使うべきなのです。

「ベタな表現」は、わかりやすく有効だから多用されているということ。ベタを使い倒す、それが、伝わる表現への最短距離なのです。

このように、テレビ番組制作のノウハウは、日常会話や、商談、説明、プレゼン、オンライン会議など対面でのシチュエーションはもちろん、SNSやブログ、ネットショップの商品説明など文章で伝える際にも活用することができます。ぜひ、ご参考になさってください。



ありふれた言葉が武器になる 伝え方の法則 本橋 亜土/著


本橋 亜土◎1978年生まれ。番組制作会社スピンホイスト代表取締役。複数の制作会社でディレクターとして『王様のブランチ』(TBS)、『行列のできる法律相談所』『嵐にしやがれ』『しゃべくり007』(全て日本テレビ)などの人気番組を制作した後、プロデューサーを経て2017年に独立。

『ありふれた言葉が武器になる 伝え方の法則』(かんき出版)

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