がん、子育て、更年期 「タブー視されている生きづらさ」をなくしたい

中西知子さん(左)と北風祐子さん(右)


100%の力で働き続けられない時期は、誰にでも訪れる


──生きづらさを抱える人たちが苦しまずに活躍できる社会は、どうすればつくれるでしょうか。

北風:会社であれば、メンバーが悩みを抱えていたらマネジャーがそれに気付けることが大切です。マネジャーがメンバーの様子にしっかりと目を向けられない組織は、まるで土地が枯れていくように力を失っていきます。

中西:弱さを当たり前に受け入れられる人を育てていく必要がありますよね。かく言う私も、実はつい最近まで、「自分はいつも100%の力で仕事ができる」と思い込んでいました。ところが3年ほど前に精神的に落ち込んでしまい、今まで通りに働けなくなってしまったんです。「どんな人でも全力で働き続けるなんてありえない」ということに、初めて気が付きました。


中西知子さん

仕事をセーブせざるを得ない時期が訪れるのは、子育てをする人だけではありません。親の介護が必要になるかもしれないし、自分が病気になるかもしれない。性別や年齢にかかわらず、誰にでも100%の力で生きていけない時期は訪れます。まずはそれを全員が理解すること。組織マネジメントは、その前提で行われる必要があります。

北風:仕事の量を多くこなすことはできないかもしれないけれど、それでも無理のない範囲で役に立てることはきっとある。「弱っている人は何もしないで」ではなく、できることをお互いに補い合える関係性ができるといいですね。

中西:弱さに関して私が今気になっているのは、更年期。私もかなり辛い思いをしましたが、更年期の辛さをオープンにできる雰囲気は、まだないような気がしています。このような“タブー視されている生きづらさ”にアプローチすることによって、誰もが自分らしく生きられる社会をつくっていければと思います。


北風祐子◎電通第4CRプランニング局長。1992年東京大学文学部社会心理学科卒業、電通入社。2008年電通初のラボであるママラボを創設。戦略プランナーとして各種企画の立案と実施に携わる。2020年5月から現職。フラットでオープンな、誰もが働きやすい世の中の実現を目指している。ピンクリボンアドバイザー中級。Forbes JAPAN Webにて自身の乳がん闘病体験を綴った〈乳がんという「転機」〉を連載。
著書:『インターネットするママしないママ』(2001年ソフトバンクパブリッシング)、『Lohas/book』(企画制作、2005年木楽舎)

中西知子◎朝日新聞社メディアラボプロデューサー。神戸大学卒。1992年毎日新聞社大阪本社入社。選抜高校野球、高校駅伝、びわ湖毎日マラソン大会などスポーツイベント運営に携わる。97年朝日新聞社入社。2002年ピンクリボンプロジェクトを立ち上げる。09年ダイバーシティープロジェクト、16年がんとの共生社会を目指すネクストリボンプロジェクトを立ち上げ、プロデュース。13年、社内新規事業コンテストでクラウドファンディング(CF)事業を提案し、15年にCFサイト「A-port」をローンチ。現在は、ビジョン会議サポート事業社会課題解決型キャンペーン支援事業を手がける。

文=一本麻衣 写真=小田駿一

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