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2021.05.13

中国版ウェイモ「Pony AI」が米ルミナー製LiDARのテストを開始

(C)pony.ai

車載用LiDARセンサー市場では現在、世界70社以上の企業が競い合っており、その数は増え続けているが、今から10年程度でこれらの企業の数は10社以下になる見通しだ。

そんな中、有望企業の一社とされる米国のルミナー(Luminar)が、中国の自動運転企業「Pony AI(小馬智行)」に次世代自動運転システム(ADS)用のセンサーを供給する契約を締結した。

Pony.aiは元バイドゥのエンジニアらが2016年に立ち上げた企業で、2018年には中国の自動運転分野で史上最大となる、2億1400万ドル(約240億円)のシリーズA資金調達を実施した。香港のサウスチャイナ・モーニング・ポストは同社を「中国版ウェイモ」と呼んでいた。

Pony AIは現在、中国の広州や上海、北京およびカリフォルニア州のロボットタクシーのパイロットプログラムで、ADSのテストを行っている。Pony AIのセンサー群は現在、Hesai社製のカメラやレーダー、LiDARセンサーで構成されている。

Pony AIが現在開発中で、2022年からテストを開始予定の新システムは、ルミナーのIrisと呼ばれるLiDARを採用し、より洗練された一体感のあるデザインを実現している。このLiDARは、ボルボ・カーズが2022年に発売する次世代のXC90や、上海汽車集団(SAIC)の新たなRブランドのEVに搭載するものと同じモデルだ。ルミナーのHydraと呼ばれるLiDARは、トヨタやダイムラートラックにも採用されている。

ボルボはルミナーのLiDARをまず、高速道路向けの自動運転システムに採用し、フロントガラスの上端に1つのLiDARを搭載する見通しだ。一方で、Pony AIが開発中のレベル4のロボットタクシーサービスでは、360度の範囲をカバーしようとしている。

現状のPony AIの車両では、ベロダイン社のパックセンサーによく似たHesai社の回転式センサーが3つ使用されている。このセッティングでは、多くのADSアプリケーションと同様に、中央に1つの垂直センサーが設置され、ルーフの両側に2つの角度付きセンサーが設置されている。

ルミナーのIrisの水平視野は120度であり、Pony AIは前後左右に4つのセンサーを搭載して、フルカバレッジを実現し、ルーフトップポッドの他のセンサーでさらにカバレッジを追加する。薄型のIrisセンサーを採用することで、ポッドの高さは屋上から10cmに抑えられる。

ルミナーのIrisは500ドル台の価格に


ルミナーのLiDARは、目に障害を与えないアイセーフな1550nmのレーザーを使用しており、高出力で長距離の検出が可能だ。回転センサーを含む多くのLiDARで使用されている一定の標準的なスキャンパターンではなく、ルミナーはスキャンパターンを変更してより多くのレーザーパルスを対象物に照射し、高密度のセンシングを可能にしている。

ルミナーは最大500mの検出距離を謳っており、250mで10%の反射率の物体を検出することが可能だ。これは、現在販売されているほとんどの回転式LiDARよりも優れている。先日、Argo AIが発表した新しいLiDARセンサーは、10%の反射率の物体に対し400mの検出距離を謳っているが、このセンサーはルミナーほどの高密度をセンシングを達成できないでいる。

ルミナーのIrisセンサーは、車載用として湿気や埃の侵入に耐えられるように設計されており、耐衝撃性や耐振動性にも優れている。同社は量産化を実現し、Irisセンサーの価格を500ドル台にまで引き下げる見通しだ。Pony AIは、ルミナーのプロダクトをテストした後、2023年から大規模な商用化を計画中だ。

編集=上田裕資

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