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最先端の経済誌「Forbes JAPAN」の記事紹介


フィールドワークで顧客に共感する。プロトタイプをつくって考える。部署や専門の違う人同士でコラボレーションする。こうしたデザイン思考の前提はどの時代も変わらない、と奥出。むしろ変化したのは扱う対象だ。デザイン思考の実践にいま欠かせないのは、AI(人工知能)やディープラーニング(深層学習)への理解になった。

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SKFホームページより。DXを果たした同社は、回転機器にまつわる製品開発のほか、産業機械の運用最適化、設備資産管理、メンテナンスサービスなどを提供。Apple Watch用アプリもリリースしている。

「アクセンチュアなど、AIを動員してデザイン思考を取り入れるトップコンサルが増えている。例えば、何十年も稼働してきた工場内で何が起きているか。これから何をすればいいのか。顧客優先のUXをつくるために、AIなどで判定する技術が必要になってくる」

成功例に挙げたのは、世界最大手のベアリングメーカー、SKF(スウェーデン)だ。中国勢にシェアを奪われて高付加価値製品にシフトしたのが数年前。その後の業績回復の原動力が、サービス事業だった。

「顧客が置かれた事情ごとに製品をカスタマイズしたんです。iOSとAndroid向けの無料アプリを何種類もつくり、顧客が抱える課題を吸い上げた。AIで判定して、プロトタイプをつくって見せて、お客さんに意見を聞き、半年ほどで仕上げて渡す。こうしたサービスが祖業のモノづくりに迫る稼ぎになりました」

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任天堂ホームページより。ゲーム機(Nintendo Switch)と段ボール工作を組み合わせ、ロボットの操縦やクルマの運転感覚を再現する「Nintendo Labo」はプロトタイプの発想。奥出研出身者たちが開発に携わった。

真のゴールは人材育成にあり


リアルインダストリーにも強いインパクトをもたらすデザイン思考。日本の産業界に根付かないのは、アイデアを出すプロセスだけが重宝される面もある。

「短期の研修材料やソフトウェアサービスをつくるブレストの道具で止まっている。しかし、フィールドワークは手間がかかるし、MVPの試作モデルを実際につくる力を備えた日本企業も少ないから、仕方ない」

本来のデザイン思考が時間をかけて目指すゴールは、人材育成にあるという。組織に一連の「型」を浸透させることにより、全員がクリエイティブな状況が生まれる。「アイデアを生み出す力なり、工作する力なり、マーケットを考えるために人を見る目なりを組織で培う。これまで直面したことのない難しい問題を解くときも、現象を観察する、取りあえず組んでみるメソッドは有効。いろんな場面にみんなで適用したらいい」。

文=神吉弘邦

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