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デザイン思考「3つの前提」

商品やサービスの研究開発、経営やマーケティングの現場にあって、デザイナーの思考法を応用してイノベーションをもたらす手法。第一人者の研究者がたどり着いた一つの結論とは。


歴史は30年前にさかのぼる──「デザイン思考」の研究で知られる奥出直人は、次のように解説する。手法を系統立てたのは、1991年にIDEOを共同設立したビル・モグリッジ。ノートPCの原型(膝の上に載せて使えるという意味で「ラップトップコンピュータ」と名付けた)を考案した人物だ。

「彼は『ディテールデザイン』と『コンセプトデザイン』の2つがあることを見つけた。コンピュータ以前のプロダクトはコンセプトを練らず、ディテールさえ考えればデザインできた」

当時、持ち運べる個人用コンピュータは、これまでにない画期的な商品。新しいコンセプトが生活にどう影響をおよぼすか。例えば、スティーブ・ジョブズはわかりやすい短編動画にして伝えたことで知られる。

「90年代のIDEOが説いたデザインは、コンセプトをプロダクトに落とすデザイン。家電の形やボタン、やがてPCや携帯のグラフィックも変えた。その後、21世紀になって『使う経験』をデザインする考え方が、アップルを皮切りに一気に現れた。コンセプトデザインに加えてUX(顧客体験)デザインが必要になるんだと」

この時代、著名プロダクトデザイナーの多くが退職に追い込まれた。代わって席巻したのが「サービスデザイン」を標榜するAdaptive Path(2014年に米金融大手のCapital Oneが買収)などのデザインファーム。さらに、メイカーズ・ムーブメントの影響で時代が動く。

「コンピュータが要素分解されるものになり、グラフィックだけでなく、アクチュエーターやセンサーからUXをデザインできるようになった。その結果、プロトタイプ(試作)の意味がガラッと変わったんです。いわゆるMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の商品)として『この商品で意図した顧客体験をちゃんと届けられるか?』とエンジニア兼デザイナーのような職能がチェックできるようになった。もはや『機械自体をどう設計するか』にデザインが取り組む時代です」

この圧倒的な達人だったのが、アップル元CDO(最高デザイン責任者)のジョナサン・アイブだという。

「彼の貢献は、UX、機械設計、プロダクトデザインを自らが手がけ、すべての特許を押さえてから工場に渡してファブレス化したこと。そのロジスティクスを固めたのがティム・クック(アップルCEO)です」

文=神吉弘邦

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