Savlonは、石鹸入りチョーク(ヘルシーハンズ・チョークスティック)を開発し、子供が親しみやすい絵柄のパッケージに入れて、22の地域の100の学校に配布した。
「Savlon Healthy Hands Chalk Sticks - English」より
このチョークを使うことで、子供たちが自然と石鹸で手を洗うことになった事実を、多くの国内メディアが紹介。SNSでも、わずか4日間で、ツイッターで430万回、フェイスブックで320万回、取り上げられることになった。
ヘルシーハンズ・チョークスティックの使用は、子供たちの石鹸使用へのハードルを取り除き、結果としてSavlonへの認知や好感度も高まったせいか、同社をインドで第3位の石鹸メーカーへと押し上げた。
態度変容がダメなら行動変容へ
広告やマーケティング・コミュニケーションの世界では、態度変容と行動変容という言葉がよく使われる。行動変容とは人の行動面の変化を言い、主に購入という行為を指すことが多い。また態度変容とは、その行動変容の前提となるもので、商品に関心を持たせたり、欲しいと思ってもらったりすることを指す。
長年、広告とは、態度変容を促すものだと考えられてきた。態度変容が起きれば、行動変容も起こるはずという考え方だ。なんとか石鹸で手を洗うことの重要性を消費者に認識してもらい、態度変容を促すことで石鹸を買ってもらおうとする。
しかし、Savlonのヘルシーハンズ・チョークスティックの企画は、態度変容を飛び越えて、直接、行動変容を起こさせる広告企画だ。つまり、認識に訴えるより、行動に直接働きかける。子供たちがヘルシーハンズ・チョークスティックを使うことで、自然に石鹸で手を洗うことを体験してもらい、これも悪くないなと思ってもらうということだ。
われわれの日々の暮らしのなかでも、習慣を変えることは容易ではない。一念発起が効果を発揮するケースはむしろ珍しく、日々の些細な行動を変えたほうが効果を生みやすい。英語の勉強を必死にやるぞと心に誓うよりも、英語学校のクラスをとりあえず予約したほうが結果を出しやすいし、なんなら英語圏で育った友人をつくったほうが早い。
この広告企画のように、コロナ禍の施策にしても、「不要不急の外出自粛」をただ呼びかけるだけではなく、人々が自然と外出しなくなるような方法は考えられないものだろうか。
連載:先進事例に学ぶ広告コミュニケーションのいま
過去記事はこちら>>