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2021.05.16

医療AIの米Biofourmis、アマゾン出身者の陣頭指揮で臨床ケアに参入

Getty Images

人工知能(AI)を活用して病気の予測や症状の管理を行うシステムを手がける米スタートアップ、バイオフォーミス(Biofourmis、本社ボストン)のチーフメディカルオフィサー(最高医療責任者)に、米アマゾンでウェアラブル機器の開発などに携わったモーリク・マジュムダーが就任した。複数の慢性疾患をかかえる人など、対応難易度の高い患者のテクノロジーを活用した処置に取り組む予定だ。

心臓専門医のマジュムダーはアマゾンでウェアラブル機器の開発に3年近くかかわり、リストバンド型端末「Amazon Halo(アマゾン・ヘイロー)」のプリンシパルメディカルオフィサーとしてウェルネス分野への参入を率いた。バイオフォーミスについては「病院でのケアから自宅でのケアへの移行という、いま世界で起きていることの交差点に絶妙に位置する」と述べ、新天地での活動に意気込みを示している。

2015年に設立されたバイオフォーミスは、センサーとアルゴリズムを用いて、心疾患や新型コロナウイルス感染症などの患者を遠隔でモニタリングできるテクノロジーを手がける。投薬された患者のデータモニタリングを通じて、薬の治療結果の改善で製薬会社とも提携する。昨年9月には、ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ主導のラウンドで1億ドル(約109億円)を調達した。

マジュムダーは同社の創業以来、臨床アドバイザーを務め、2019年からは取締役にも名を連ねる。「複数の疾患がある患者やそのニーズへの対応では、テクノロジーが解決策の一部にすぎないことは、皆さんわかっていると思います」とマジュムダー。今後はチーフメディカルオフィサーとして製品管理やデータサイエンス、臨床面の問題を統括する立場から、テクノロジーをうまく活用したアウトカム(臨床成果)の向上をめざしていく考えだ。

バイオフォーミスの共同創業者で、2019年にフォーブスの「30 Under 30 Asia」に選ばれたカルディープ・シン・ラジュプット最高経営責任者(CEO)は、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)では、テクノロジーを在宅ケアに組み込むことの重要性も浮き彫りになったと話す。同社はシンガポールと香港で、自社のウェアラブル機器や解析エンジンによってコロナ患者モニターする契約をしたが、それをうまくこなすには、患者をサポートするチームを編成する必要があったという。

これは、バイオフォーミス自体も医療サービス提供者になり、報酬が患者のアウトカムに連動する「バリュー(価値)ベース」の契約を結ぶリスクを負うことを意味する。マジュムダーはこれに関して、臨床面の成功だけでなく経営効率の向上でも、同社のソフトウェア基盤がかぎを握っていると述べている。

バイオフォーミスはこれまでも医療機関と提携して、患者が30日以内に再入院した場合に課せられるペナルティーを回避することに取り組んできが、今後は長期的な医療コストに責任のある健康保険会社が新たなターゲットになりそうだ。

世界最大級のテック企業に勤めていたマジュムダーは、スピード感や機敏な意思決定で知られるスタートアップ環境を楽しみにしていると話す。また、アマゾンやテック業界の製品開発では経験がものをいったが、バイオフォーミスでは「顧客の信頼を高める」ものとしてアウトカムに傾注する意向も示した。

編集=上田裕資

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