入管法改正の問題とは 日本の「難民申請者」が直面する現実と生きる道

入管法改正の反対の声があがるなか、入国管理局や収容施設では一体何が起きているのか。


最後に、難民認定率が変わらず先進国最低水準の日本だからこそ、少し違った角度でこの課題を考えてみたい。

私は、NPO法人WELgeeという団体で、命の危険を感じ、祖国を逃れて日本にやってきた人たちが「難民として生きてゆく以外の人生の選択肢を作りたい」と思って活動している。この思いは、5年間難民の若者たちと試行錯誤する中で生まれた仮説でもあり、希望でもある。

実は、難民の中には様々な経験・スキル・夢・専門性をもつ人たちが大勢いる。祖国の平和のために立ち上がる経験をしていたり、迫害にあいながらも人権運動に携わってきたり、自分でNGOや会社を立ち上げていたり......。難民にならざるを得ないような困難に直面しつつも、彼ら彼女らのユニークな個性や力のある生き方は、人として魅力的でもある。


難民として生きる若者には希望がある。彼らと向き合いながら新しいプロジェクトも始まっている(写真=WELgee)

そんな若者たちとの出会いにより、新たな選択肢の模索が始まった。彼らの個性がもっとも活きるように日本の企業に繋げていく。企業は安定した就労の場を提供し、彼らは企業の未来ビジョンに向かって協働する仲間になるプログラムを提供するに至った。

しかし、単に就職するだけでなく、祖国に足場のない彼らに必ず必要なのは、日本で安定・安心して暮らせるための「在留資格」だ。難民として認定され「定住者」の在留資格を得るためには、難民申請をし、難民調査官による審査を経る必要がある。

しかし「難民として生きてゆく以外の選択肢」を考えたとき、必要なのは、入管による「難民か否か」の審査ではない。

必要なのは、彼らのもつ可能性を信じ、能力を目利きし、ユニークな経験を買い、未来を一緒に描いてくれる企業の存在。そんな企業が存在し、日本企業での安定的な就労が叶えば「特定活動:難民として認定してもらうための申請期間にもっている在留資格」という非常に不安定な在留資格だった人たちが、「就労のための在留資格」を得ることができるのだ。

すでに、先の見えない政府の難民認定に頼らず、働くことを通じて安定して暮らせる足場を得て「難民としてではない生き方」を歩み始めた人たちが出てきている。
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文、写真=渡部カンコロンゴ清花

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