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左:ラクスル取締役CMO兼ノバセル事業本部長 田部正樹  中央:クリエイティブ・ディレクター 北尾昌大 右:GrowthCamp共同代表/co-founder 山代真啓

テレビCMを事業成長の突破口にしようと考えるスタートアップが増えている。その仕掛け人というべきラクスル取締役CMOの田部正樹が、スタートアップの広告プロモーションを主戦場とするGrowth Camp・山代真啓、クリエイティブ・ディレクターの北尾昌大と、成長戦略の鉄則について語り合った。


テレビCMは魔法ではない


ラクスルが2020年にスタートさせた、効果がリアルタイムで可視化される運用型のテレビCMを制作・放映する画期的なサービス「ノバセル」は、それまでの常識を覆した。認知度アップの起爆剤が欲しい、しかし予算的にテレビCMを打つなんて到底無理というスタートアップにとっては、高嶺の花が一気に手の届くところにきたのである。

ただ、テレビCMを打ちさえすれば、成功を勝ち取れるというほど甘くはない。スタートアップのグロース支援を行っている山代真啓は「CMをただ打つのではなく、施策がかけ算になるように設計することが重要だ」と指摘する。

「一例を挙げると、モバイルバッテリーのレンタルを手がけるチャージスポットというサービスを展開する会社は福岡でCM放映のテストを行いましたが、そのタイミングで地元のコンビニと提携したり、クーポンを発行するなど、いくつかの施策を組み合わせて業績を伸ばしました」

CMは魔法ではない。デジタルマーケティングや営業活動との連携、プロダクトの改善などがひとつの目的に向かって組み合わさってこそ成果に繋がるし、初めて非連続な成長を遂げる可能性を生む。

「その意味で、『CMの実施は、もっとサービスを磨き込んでから。1年後とかにトライしたほうがいい』とアドバイスするようなケースも少なくありません」と、運用型テレビCMサービス・ノバセルを提供してきた田部正樹も続ける。あらゆる手立てを集中させることでテレビCMもうまく成長に寄与するということだ。田部が最近手がけた例に、この3月にIPOしたスパイダープラスがある。建設業向けの業務効率化アプリを手がける同社は、関東でテレビCMを打ったが、それに合わせて営業強化とセミナーによる自社サービスのターゲット層への浸透、Webマーケティングを連動させた。

「CMのいいところの一つは、社内がある種お祭りのように盛り上がることです。“勝負をかける1カ月”というタイミングをつくって、すべてのモチベーションをそこにフォーカスさせました。クリエイティブ面でもユーザーとして大手建設企業様に登場してもらい、説得力を高めました。これらの相乗効果によって、大きな成果を上げたのです」(田部)

“アジャイル型広告開発”がテレビCMの成功確率を高める


北尾は電通の出身。キャリアを振り返ってこう語る。

「僕は電通の中でも特異なキャリアで、入社2年目から任天堂の担当をひとりで任されました。ディレクション、企画、コピーライティングなど、通常、複数人のプロフェッショナルチームでやることをずっとひとりでやってきました。結果として、そのスタイルがスピートと質を担保したいスタートアップ企業に向いていました。スタートアップはCMが一度当たるとその影響が大きい。その影響力の強さががシンプルに楽しいんです」(北尾)

一方で、広告開発には、ブランディング効果という観点から「その会社らしさ」を感じさせることも重要だ。逆に「その会社っぽくない」CM表現はよくないということになる。それこそが「とても大事にしているポイントです」と、クリエイティブの立場から北尾は力を込める。

「その会社らしさを知るためにも、経営者と会話を重ねることを大切にしています。経営者の人となりや考え方を理解することは、クリエイティブ要素の判断をする時の指針になります。また、実際、経営者と話をしているときが最も企画のアイデアが生まれてきますね」

成功確率を上げるための対話の重要性については、田部も別の角度から強調する。「広告業界の主流である一発オリエン、一発プレゼンは、やや疑問です。私は最近“アジャイル型広告開発”を提唱しているのですが、要はみんなで話す、ということ。企画はみんなでぐるぐる考えたほうがいいし、そのサイクルを速くしていけば必ず成功の確率も上がります。マーケティングもクリエイティブも、自分たちの担当する場面でだけでなく、戦略・市場調査・制作・効果測定・分析まで、すべての場面をみんなで伴走する。クライアントの課題に対する解像度を全員で高めるからこそ、必要不可欠なパートナーになるんです」

スタッフ全員が多くのプロセスで話し合い、社長の思いを聞き、戦略を明確にしながらアイデアを出し、作っていく。対話を重ねることによってクライアント側のクリエイティブに対する解像度も上がっていく。スタートアップは、そもそもアジャイルな組織と考え方で事業に取り組むだけに、広告についてもそうしたスタイルへの理解はあるのだという。

効果の可視化は最低条件


山代はP&Gの出身で、スケールもスピードも違うスタートアップ相手に、違和感はないのだろうか。

「メルカリにジョインしたときに、P&Gスタイルをアンラーニングしました。いちばん違うのはスピードで、体感では10倍は速い。1年かけて準備していたものを、1カ月で決めてすぐに実行に移す、という違いです。スタートアップは特にそうですが、身の丈に合った投資で最大限の価値を出すことが求められます。そのためには効果の可視化は最低条件です。テレビCMはデジタル広告と同レベルにリアルタイムに効果を可視化できるようになってきたのでPDCAサイクルを極限まで早く回すことが可能になってきています」

テレビCMは、短期的な成果を狙い、同時に中長期にわたってブランディングをし、企業価値を伸ばすことのできる手段のひとつである。投資額は大きいが、効果が可視化されていれば、大胆に投資することも可能になる。

こうした可能性を見据えて、ノバセルという斬新なプラットフォームを創始した田部。従来型の広告代理店ビジネスとはまったく違い、コストパフォーマンスを含めた「成果」で勝負する3人は、スタートアップの成長を支える起爆剤として、経営者が関心をもたざるをえない存在になりつつあるのではないだろうか。

「もちろん効果こそが重要というのは、効果がすべて数字で見えてしまうため、自分の首を絞めかねないことでもあります。それでも、ラクスルはそれで成長してきましたし、スタートアップにはこのやり方があっている自信がある。バズることや、話題になることも大事かもしれませんが、なによりCMによって成果を上げることを重視します。いきなり全国で大きく展開するより、まずは地方でABテストを実施したり、放映枠の影響をリアルタイムで見ながらクリエイティブを変更したり、確実な勝ち筋を一緒になって見つけていく。私がクライアントなら、そういう人と仕事をしたいと思いますね」(田部)

大きな投資だからこそ、確実な道を進む。スタートアップにとって、希望の光になるのではないだろうか。





ブランドバックのシェアリングサービスを展開するラクサスが2021年2月に放映したテレビCM(写真上)は、ノバセルと北尾のタッグによってつくられたものだ。この反響がよかったことで、「もうひと押ししたい!」という社長の声に応えるかたちで、サービス内容を訴えるCM(写真下)も3月に急きょつくられた。そのスピード感も、ノバセルならでは。

ノバセル
https://novasell.com/



田部正樹(たべ・まさき)◎ラクスル取締役CMO兼ノバセル事業本部長。テイクアンドギヴ・ニーズの戦略室長、マーケティング戦略部長などを経て、2014年にラクスルに参画。2020年ノバセルを立ち上げる。

北尾昌大(きたお・まさひろ)◎クリエイティブ・ディレクター。電通にて任天堂をはじめ国内外の 企業のテレビCMなどを手がける。独立後はスタートアップ企業を中心に、クリエイティブの力で事業支援を行う。

山代真啓(やましろ・まさひろ)◎GrowthCamp共同代表/co-founder。P&G、メルカリ、メルペイ等でマス広告、デジタル、CRM等マーケティング全般を牽引。2020年にスタートアップ企業のグロース支援を行う。

Promoted by ラクスル / text by Toshihiko Masugi / photographs by Tadayuki Aritaka / edit by Miki Chigira

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