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2021.05.13 08:30

定員制限、マスク義務も緩和へ 明るい夏に向かうラスベガス


約3兆円の補助金をレストラン業者に支給


バイデン政権は、さらに5月4日から、新たに約3兆円の補助金をレストラン業者に支給するという政策を、超スピードでまとめてスタートさせた。レストラン再活性化基金というものだが、これは貸付ローンでなく、返す必要のない補助金だ。

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ニューヨークのウィリアムズバーグのレストランの屋外テーブルで食事を楽しむ人々(3月26日/Getty Images)

数万とか数十万円という規模でなく、1店舗あたり最大上限で約5億円もの補助金が申し込める。あくまで利益損失部分の補填を通じ、雇用維持を狙ったものなので、火事場泥棒のようなことにはならないとは思うが、申し込みのできない不適格者は、上場会社だったり、20軒以上のレストランを所有しているチェーンだったりということで、その「敷居の低さ」には吃驚する。

この補助金の申し込みの手続きを実際に目撃したが、すべてオンラインで処理されるそのポータルサイトはお世辞にもよくできたものとは言えず、不整合や不合理なところも多い。

窓口である中小企業庁は、過去の確定申告書を出せ、税務当局のデータで裏を取るから嘘はつけないなどと警告する一方で、まだ確定申告してない場合はそれでも構わない、会計監査のない簡単な財務諸表だけでも受け付けるという柔軟な対応を見せていることには驚くばかりだ。

なぜレストラン業者だけに補助金が支給されるのか、他にもたくさんコロナ禍で被害にあった業界はあるではないかという議論も、当然のように噴出しているが、「では、その議論はいつかどこかに着地するのか?」と行政側や推進論者、そして多くの大衆に反論されて終わってしまう。

それは、批判をされないように議論を尽くして完備を目指すが、それまでは経済被害を忍耐するより、できるところから手を付けて、批判はあとでゆっくり聞こうという態度のように見える。

正確性や確実性を重んじ、住民間の公平性を担保することに躍起になっていた日本の個人への給付金支給と比べると、アメリカのこのような制度はかなり雑で、非効率も多く、使い勝手の悪さなど不満を言う人も多い。

しかし、不満はあっても、非効率でも、結局、適格者は補助金を得ている。そして経済も回復へと進んでいる。

現在のようにコロナ禍が少し落ち着いてくると、連邦政府は不正取得をした人を片っ端から逮捕し、起訴して、後づけで公平性への修正にかかる。

筆者は元日本の銀行員だから、間違える前に歯止めを考えよと訓練され、事務の正確性にこそ仕事の魂が宿ると、そのことに大きな価値を置いて社会人生活を送ってきた。

しかし、事務の正確性を落として処理のスピードが上がるのなら、(誤解を恐れずに言えば)批判などには耳を傾けず、最大効用を狙ってまずはプランを進めてみて、間違いは後から修正すればいいという、自分の信条とは真反対の戦略のほうが効果を発揮することもあり、場合によっては人の命を救うこともあるのだと、あらためて考えさせられるようになった。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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