パブリック賞を受賞したのが、福島市、会津若松市を中心に県全域をホームタウンとする「J3福島ユナイテッドFC」。選手たちが手づくりする桃やりんごなど農産物がみずみずしくておいしいと評判だ。
東日本大震災の原発事故の影響で受けた県産品の風評被害を払拭すべく、2014年から「福島ユナイテッドFC農業部」を立ち上げ、地元農家たちとタッグを組んで育てた農産物をイベントや試合などで販売してきた。コロナ禍の昨年6月から農業部の公式オンラインショップを始め、販路を拡大し、農業支援にとどまらない事業展開が評価された。
どのように地元農家と連携しながら、収益を生むビジネスとして事業を進めてきたのだろうか。福島ユナイテッドFCゼネラルマネージャーの竹鼻快、事業部の阿部拓弥、農業部部長を務める樋口寛規選手に話を聞いた。
農作物への風評被害に、サッカークラブは何ができるのか
福島ユナイテッドFCが本拠地を置く福島市は、野菜や果樹などの農業が盛んな地域。震災後、原発事故による農業への影響を周囲に住む農家から聞いたことが活動の始まりだったと竹鼻は振り返る。
「原発事故の風評被害を受けて農作物が売れないこと、後継者が不足していることを理由に、農業を辞めようとする声が多く聞こえてきた。そこで、何か自分たちに協力できることがないかと考えるようになりました」
福島市内は福島第一原子力発電所から距離が離れているため、農作物などの出荷が制限されるほどの放射線量は検出されていなかった。しかし震災後は福島県産の野菜や果物への風評被害が多く発生。消費者庁の風評被害調査で「福島県産の食品購入をためらう」と答えた人の割合は、この活動が始まった14年8月に19.6%ともっとも多く、徐々に減少しているものの、安全性が確保され、事故から10年たったいまでも8.1%に上る。
そうした状況を変えるために、サッカークラブは何ができるのか。
福島県の大野農園にある福島ユナイテッドFC農業部が育てるりんごの木。ここから活動が始まった
もともと繋がりのあった企業からの紹介で知り合った、福島県石川町でりんごを栽培する大野農園との出会いがきっかけとなった。
「大野農園代表取締役の大野栄峰さんは、当時から異業種とのコラボレーションを通じて地域の農業活性化に取り組んできた方。大野さんと『一緒にやりましょう』という話になり、広報活動を行うだけでなく、ある程度自分たちが本気で農業に関われるようにと、りんごの木を2本購入したところから活動が始まりました」(竹鼻)