経済回復へ前進するニューヨーク ポストコロナの社会を映し出す

低リスクの野外活動などは再開され、タイムズスクエアにも活気が戻ってきている(4月10日/John Lamparski/Getty Images)

4月29日に、ニューヨーク市のビル・デブラシオ市長が「ニューヨーク市は7月1日から100%経済活動を全面再開する」と発表した。

昨年、アメリカのなかでも最初に新型コロナウイルスの感染拡大が起きたニューヨーク市は、3月からのワクチン接種開始後2カ月で、このデブラシオ市長の「再開宣言」まで漕ぎ着けた。

ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事も、5月17日からは、消毒作業は続けつつも地下鉄の24時間営業を再開すると発表した。さらに隣接するニュージャージー州、コネチカット州とともに、集会やイベントなどの人数制限も緩和するとした。オフィスの収容可能人数も75%までとし、9月14日にはブロードウェイのミュージカル公演も再開する予定だという。

インドでのパンデミックが痛ましいレベルで拡がり、世界各国で変異株が拡散しつつあるなか、アメリカはひと足先に、垂れ込めた雲を吹き払い、その上に広がる青空を見るかのように、経済回復へ向けて前進を始めている。

需要回復が急で供給側が間に合わない


ジョー・バイデン大統領は、2億回分の接種を就任100日目までに達成すると宣言したが、4月21日の時点では、総人口の40%が1回は接種を済ませ、25%はすでに完全に接種を終えた。

4月、私も接種したジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンが、一時、血栓形成の懸念から接種が停止されたが、それも稀なケースであるということで再開された。当初は年齢制限や予約が必要だった接種だが、いまでは予約なしでもその場で接種が可能なほどワクチンにも余剰が出てきている。

無料でPCR検査を受け付けていたクリニックも、むしろいまは検査を有料化し、ワクチン接種を促しているのだが、そのスピードは鈍り始めている。2回目を打たなかったり、はじめからワクチン接種を避けたりする人もいるからだ。ジョン・F・ケネディ空港に近い競馬場の施設を使用したニューヨーク州運営のワクチン接種会場は、開始から2カ月、5月の初頭ですでに閑散としており、閉鎖も視野に入ってきている。


自然史博物館もワクチン接種会場に。大きなクジラの模型の下に立つのはビル・デブラシオニューヨーク市長(4月23日/Getty Iamges)

とはいえ、アメリカ全土の感染者数はすでに約3300万人と世界一の数になっているものの、日々の感染者は全国で5万人台、ニューヨーク州でも約3000人と、緩やかな減少傾向を見せており、いちおうピーク時の4分の1を下回る水準にまで達している。

昨年6月のロックダウン解除後から9月にかけて、いったん感染拡大は下火になった。現在はその時期と同じ程度にまで落ち着いてきている。

ワクチン接種後の免疫には有効期限があるとも言われる。アフターコロナの世界は、今後ワクチンの定期接種をしながら社会は進んでいくのか、この冬にも2ラウンド目の接種があるのか、安心感は広がったと言っても、まだまだ油断はできない。
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文=高橋愛一郎

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