世界有数の大学院大学が考える、創造性を育む環境と「5つのC」

沖縄科学技術大学院大学 ピーター・グルース学長


谷本
:地元、沖縄での取り組みは?

グルース:コンサートやサイエンスフェスタをはじめとしたイベントを沖縄県や地元の自治体である恩納村と、協力して開催することで、文化的交流を深める活動をしています。その他にも、地元の方々を対象とした招待イベント、OISTの研究者や学生が地元の小中学校や高校に行って科学を教えるというプログラムもあり、沖縄県民に対する科学のアウトリーチ、教育を拡大する活動を多数行っています。また、現在イノベーションパークをつくる企画も進めていますが、その中に科学教育が目的ともなるアミューズメント施設なども作りたいと思っています。

沖縄は県内のGDPの26%を直接間接的に観光業に依存していて、このコロナ禍で経済的に苦しんでいるわけです。ですから、新しい企業を作り出したり、誘致したりして、沖縄の経済を多様化していかなければいけない。この点においてOISTは大きな役割を果たすことができると思っています。

つまりOISTが触媒となって、科学だけではなく、科学の知的ベースを活用することで世界中から起業家たちを呼び込むことができる。

例えば、外部から起業家を誘致し、1年間ほどの資金提供や各種サポートを通してPOCを推進してもらうというプログラムもあり、初年度は世界中から200のプロジェクトの申請がありました。

そうした中からこれまでに5つのプロジェクトを採択して資金提供や研究リソースへのアクセス、専門家やベンチャーキャピタルとのマッチングなどのサポートを提供したのですが、これはインキュベーターや資金提供というしっかりとした枠組みがあれば人を呼び込むことが可能だということが実証された良い例だと思います。

実はOISTの隣に恩納村が所有する未開発の土地があって、現在はその土地を借りてイノベーションパークを建設するという企画を進めていて、例えば、子供たちが恐竜の3Dプロジェクションを見てワクワクしながら進化について学ぶことができるエンターテインメントパークを作りたいと思っています。

こうした開発企画の他にアジア・ソサエティと協力しながら50億円規模のベンチャーファンドを立ち上げて行くことも計画しています。OISTは沖縄に新しいハイテク企業を呼び込むことで観光業に依存しない安定した経済を築き、地域社会の経済に貢献していきたいと考えています。

インタビュー・構成=谷本有香 文=賀陽輝代

ForbesBrandVoice

人気記事