累計1100万キロを走破した「ロシア企業の自動運転」の実力

(C)Yandex

ロシアのテクノロジー企業ヤンデックス(Yandex)の自動運転部門の「ヤンデックスSDG」が、2017年のプロジェクトの始動以来、累計700万マイル(約1150万km)の自動運転による走行距離を達成した。同社の自動運転による走行距離は、アルファベット傘下のウェイモや中国のバイドゥに匹敵する規模に達している。

ヤンデックスSDGの事業開発責任者のアルテム・フォーキン(Artem Fokin)によると、同社は現在、毎月約50万マイルの自律走行を実施中で、160台の車両を運行しているという。車両の大半はモスクワで運行中だが、テクノロジー都市として知られるイノポリスではロボットタクシーを展開し、イスラエルのテルアビブやミシガン州のアナーバーでも試験プログラムを実施している。

「今年のモスクワは記録的な大雪で、これまでにない環境で自動運転のトライアルを実施出来た。また、テルアビブの狭い道路での経験も役立っている」と、フォーキンは話した。

ヤンデックスSDGは、Roverと呼ばれる配送用ロボットも開発し、歩道上を自律走行させている。このロボットは主にモスクワで活用され、これまで7500件以上の配達をこなし、食事や食料品などを顧客の家に届けたという。

ヤンデックスの広報担当者のユリア・シュヴェイコによると、Roverには同社のロボットタクシーと同じソフトウェアとAI(人工知能)が搭載されているが、配送には独自の課題もあるという。道路上の車両や自転車の動きは規則的だが、歩道上の人間はあらゆる方向に動くため、それを予測することはかなり困難だ。

このような理由から、Roverの最高速度は時速5マイル以下に制限されている。

同社は昨年、テストプログラムをアメリカと韓国に拡大し、ミシガン州アナーバーでは7台の自動運転車両とRoverを走らせている。パンデミックが落ち着けば、米国でのテストをさらに拡大したいと考えている。

「ミシガン州は、当社のチームを歓迎してくれている」とフォーキンは話す。ロシアのイノポリスでは、自動運転車に人間のセーフティードライバーを同乗させる必要があるが、ミシガン州では、その必要がないという。

ロシア、イスラエル、米国の道路環境の違い


シュヴェイコによると、ロシアとイスラエル、米国の3国では、人々の自転車の走らせ方に違いがある。「ロシアでは、自転車に乗る人の動きはやや控えめだが、イスラエルの自転車はアグレッシブで、車道を縫って走っている。さらにアメリカでは、自転車は基本的に車と同じように行動し、車線全体を使って走行する。それぞれの国で、自動運転車に求められる対応には違いがある」と彼女は話した。

同様にフォーキンも、米国人とロシア人の自動車の運転の違いを話す。「アメリカで最初に自動運転車を走らせたとき、『車線変更が急すぎる』と言われた。自動運転を導入する上では、現地の運転マナーに沿った動きが重要になる」と彼は述べた。

ヤンデックスSDGは現在、約400名のエンジニアに加え、運用スタッフやサポートスタッフを雇用しているが、他社と比べるとかなり低コストで運用し、立ち上げから4年間の開発費は約1億ドル程度だという。これに対し、シリコンバレーの自動運転企業は何十億ドルもの資金を開発に注いでいる。

フォーキンによると、同社のロボットタクシーはまだ一度も事故を起こしておらず、安全性には自信を持っているという。

編集=上田裕資

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