ヤンデックスSDGの事業開発責任者のアルテム・フォーキン(Artem Fokin)によると、同社は現在、毎月約50万マイルの自律走行を実施中で、160台の車両を運行しているという。車両の大半はモスクワで運行中だが、テクノロジー都市として知られるイノポリスではロボットタクシーを展開し、イスラエルのテルアビブやミシガン州のアナーバーでも試験プログラムを実施している。
「今年のモスクワは記録的な大雪で、これまでにない環境で自動運転のトライアルを実施出来た。また、テルアビブの狭い道路での経験も役立っている」と、フォーキンは話した。
ヤンデックスSDGは、Roverと呼ばれる配送用ロボットも開発し、歩道上を自律走行させている。このロボットは主にモスクワで活用され、これまで7500件以上の配達をこなし、食事や食料品などを顧客の家に届けたという。
ヤンデックスの広報担当者のユリア・シュヴェイコによると、Roverには同社のロボットタクシーと同じソフトウェアとAI(人工知能)が搭載されているが、配送には独自の課題もあるという。道路上の車両や自転車の動きは規則的だが、歩道上の人間はあらゆる方向に動くため、それを予測することはかなり困難だ。
このような理由から、Roverの最高速度は時速5マイル以下に制限されている。
同社は昨年、テストプログラムをアメリカと韓国に拡大し、ミシガン州アナーバーでは7台の自動運転車両とRoverを走らせている。パンデミックが落ち着けば、米国でのテストをさらに拡大したいと考えている。
「ミシガン州は、当社のチームを歓迎してくれている」とフォーキンは話す。ロシアのイノポリスでは、自動運転車に人間のセーフティードライバーを同乗させる必要があるが、ミシガン州では、その必要がないという。
ロシア、イスラエル、米国の道路環境の違い
シュヴェイコによると、ロシアとイスラエル、米国の3国では、人々の自転車の走らせ方に違いがある。「ロシアでは、自転車に乗る人の動きはやや控えめだが、イスラエルの自転車はアグレッシブで、車道を縫って走っている。さらにアメリカでは、自転車は基本的に車と同じように行動し、車線全体を使って走行する。それぞれの国で、自動運転車に求められる対応には違いがある」と彼女は話した。
同様にフォーキンも、米国人とロシア人の自動車の運転の違いを話す。「アメリカで最初に自動運転車を走らせたとき、『車線変更が急すぎる』と言われた。自動運転を導入する上では、現地の運転マナーに沿った動きが重要になる」と彼は述べた。
ヤンデックスSDGは現在、約400名のエンジニアに加え、運用スタッフやサポートスタッフを雇用しているが、他社と比べるとかなり低コストで運用し、立ち上げから4年間の開発費は約1億ドル程度だという。これに対し、シリコンバレーの自動運転企業は何十億ドルもの資金を開発に注いでいる。
フォーキンによると、同社のロボットタクシーはまだ一度も事故を起こしておらず、安全性には自信を持っているという。