AI時代、日本人が世界の下請けマシンにならないための秘訣とは

NeuralX 仲田真輝


──個々がそれぞれの強みや特性に合わせて仕事に就ければいいのですが、現状の問題点はどんなところにあると思いますか。

仲田:適性に関しては、まず、一番最初の採用で、新卒一律採用や、ワンタイムで4月に採用するというのはやめるべきだと思います。新卒に、入ってから学んでください、デザインされたジョブを生涯こなしてくださいというやり方では、適性のフィットができにくいと思うんです。新卒の人たちは、社会に出たことなく、自分の適性は絶対わからないはずです。では、どうしたらいいのかというと、少しでもやる気のあることをさせる。人間は、やる気があるから生産性が上がると思うんです。

経営者側も、人材の採用に関し、自分たちの問題点は何なのか、そして、その問題点に対して足りないものは何か、さらに、それを補える人材とはということを意識して、採用のあり方を変えてあげること、それが、社員の潜在能力を一番引き出す方法だと思います。

アメリカでは、チームの作り方に関しても、プロダクト単位、タスク単位で考えます。チーム作業の人員数で、どこが足りないのか、そして、新卒を充てればいいのか、中途なのか、ジョブの難しさによっても変わってきますし、適切なところに適切な人が配置されていくわけです。つまり、本当にその人がフィットする場所に「適材適所」されるんです。

一方、自身と仕事がマッチしないときに、なんとなく給料のため、家族を養うため、仕事をするというやり方でしてしまうと、イノベーションを生み出す空間だったり、新しいことが生まれてくるのは難しくなると思います。仕事はそもそも、やる気がなければできない、感情がエネルギーになるし、ドライバーにもなる。その環境をどのように作っていくかが日本にとっての課題で、さもないと、日本人はただ物事をこなすだけのマシンになってしまう。それだったら、ロボットでいいんです。また、新しいものが作れないから、オフショアとしてアウトソースされるだけの国になってしまうというのが、今の日本の体質であると思っています。日本が変わらなければ、先進国から落ち、途上国になってしまい、人々は貧しくなってしまう。

──仲田さんの専門研究領域からご覧になって、個人として気をつけなければならないアドバイスはありますか

仲田:そうですね、脳の仕組みは僕自身のライフワークであり、今、手がけているPresence.fit(プレゼンス・フィット)という、AIと人間のハイブリッドで、より高いインタラクティブ性を持たせたオンラインフィットネスサービスもそうですが、やはり感情や精神のところをとても重視しています。

アメリカと日本の違いは沢山ありますが、そのひとつに、アメリカの人々が「脳」の研究も意識しているところではないかと思うのです。たとえば、身体の健康が脳に良い影響を与えるだけでなく、脳の健康が仕事のパフォーマンスに良い影響を与え、その良いサイクルを作ることを意識してやると。

アメリカは、元々、食が乏しい国だったので、身体を動かしてエネルギー消費し、脳にも栄養を与えなければいけない。もちろん、医療費が高いという理由もあるのですが、予防医学が盛んで、フィットネスもその一環と考えられている。アメリカのできるエリート層、幹部層ほど気をつけてやっているんです。アメリカのジムは、朝の5時〜8時の時間帯が1番混んでいるんですよ。夜に会食が入ったとしても、早朝にルーティンを入れておけば影響がでない。しかも、朝に脳内酸素量を増やして、脳内物質を増加させることで、午前中の生産性や脳の活動が高まることを知っているからこそ、時間のない経営者層がスクイズして事務の時間を入れているんです。
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インタビュー・構成=谷本有香

この記事は 「Forbes JAPAN No.082 2021年6月号(2021/4/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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