AI時代、日本人が世界の下請けマシンにならないための秘訣とは

NeuralX 仲田真輝


──ただ、そんな日本も新型コロナウイルスのパンデミックによって、組織や働き方を見直す動きも出てきています。

仲田:アメリカが良いのは、決定者、つまり、マネージャーは決断する人だからマネージャーなのであって、そこはヒエラルキーではなくて、フラットなんですよね。アップルでさえも3レイヤーぐらいしかないはずです。マネージャーがいて、その下にチームがあって。チームの中でのキャラクターや能力を見て、そこでちゃんとタスク管理できる。責任者以外の人たちは、共有されたゴールに皆で向かっていく。

日本で良くないのは、ひとつの会議に対して30人出るとか、その会議に対して「決める」という責任を誰も取らない文化が1番の弊害だと思うんです。

ただ、おっしゃる通り、今回ラッキーなことにコロナになって、Zoomなどのオンライン会議で何もやらない人などが、だんだん明らかになっているのが現状だと思います。

そういう人たちへの忠告は勿論するべきですし、非情な言い方をすると、そういった人たちの評価を下げる。解雇は日本では難しいかもしれませんが、成果を上げている人を評価していくことが、日本では必要なのではないかと思います。

あと、リモートで働く上でのゴールの設定ですよね。ゴール設定を日本人はなかなかやらないと思いますし、ただタスクが降ってくるのを待っている。それに対し、アメリカでは自分から探しにいく、手が空いているのであれば手を挙げて何かタスクをくださいという。それが出来ないのであれば、もういないものとして同じだし、そうすると次第に切られていくということなんですね。

──グローバル化する中で、その違いはどのように日本に影響するのでしょう。

仲田:情がないと言われるかもしれないですが、AIや機械が人がやらなくていいことをするようになるんですよ。スケジューリングやタスクのコントロールもそうです。では、何が人しか出来ないかというと、何かを決めるとか、創造すること。そこの思考能力だけは、人間が出来てコンピュータが出来ないことなのです。「今」は、ですが。日本人は、そこを鍛えておかなければならないんです。

今、アメリカから見て日本は先人たちのアセットがありますが、中国、韓国、台湾の方がアメリカにどんどん出てきており、エンジニアとしても、プロダクトとしても、成熟していいます。

中国のプロダクトでも全然いいのがありますし、そうすると、日本は今後、中国のアウトソースの国として考えられるかもしれない。日本人は人件費も安いし、真面目だし、何も考えないで働いてくれる蟻のようという捉え方になってしまうとしたら、それは凄く悲しいことです。

これまでイノベーションを多く生み出す国だったにもかかわらず、今、イノベーションは全然起きていなくて、アメリカで流行ったサービスが半年後、1年後日本に輸入されて流行っているような形が多いように思います。そういったことは、まさにAIやコンピュータができることなんです。
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インタビュー・構成=谷本有香

この記事は 「Forbes JAPAN No.082 2021年6月号(2021/4/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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