加藤(続き):実際私自身も新型コロナウイルスワクチンを4月末に接種予定でしたが、5/10以降にしてほしいと言われています。もちろん新型コロナ治療の最前線で働く医師が優先ではありますが、ワクチン接種の遅れを実感しています。
世界最速のイスラエル 集団免疫の獲得とは
NO YOUTH NO JAPAN 続木明佳(以下、NYNJ続木):ワクチン接種をすることで集団免疫が獲得されると言われますが、これはどういうことでしょうか。
加藤:免疫を獲得するには、ウイルスに感染するか、ワクチンを打つ方法がありますが、先ほどもお伝えしたように新型コロナに関しては感染することで後遺症が残ったり、死亡したりするケースも確認されているため、今は推奨されていません。
集団免疫とは、ある集団のなかで一定数以上の人が免疫を獲得することで、その集団での感染症の流行が起こりにくい状況になることを言います。例えば、100人中100人がかかりやすい状況よりも、ワクチンを打って100人中80人がかかりにくくなれば、20人の感染しやすい人は残りますが、その集団のなかでの感染の広がり方は減少します。新型コロナに関してはまだわかっていない部分もありますが、おそらく7〜8割程度の人が免疫を獲得すれば、それなりに抑え込めるだろうと期待されています。
世界最速でワクチン接種が進むイスラエルでは、接種率自体は6割以内ですが、実際に新規感染者数が減少し、屋外ではマスクをしなくてもよい状況が報道されています。ワクチンが効きにくい変異株の流行の懸念もありますが、ポストコロナが見えてきているのではないでしょうか。
NYNJ田中:コロナワクチンを製造するメーカーの名前をニュースで聞きますが、ワクチンの質に良い/悪いなどの差はあるのでしょうか。
加藤:良い悪いを証明するためには、製品同士の二重盲検試験といった厳密な治験が必要になりますが、例えばファイザーとアストラゼネカを直接比較したデータは現在はありません。現時点では、各社の新型コロナワクチン間に医学的な優劣はないと考えられています。
より安全なワクチンを打ちたいと思った時に、待てば待つほどさまざまなデータの蓄積はされますが、一方で新型コロナの感染が広がる可能性もあります。仮により良いワクチンが出るのを待っている間に感染してしまうと、「あの時打っておけば……」と後悔してしまう可能性もあります。感染症の世界では、薬剤やワクチンの安全性や有効性も大事ですが、スピード感も重要であると言えます。
加藤医師には4月22日、診療前の時間帯にオンライン取材した。日比谷クリニックではPCR検査も多数受け付けている。