コロナワクチン接種は有効か? 日本にも「スピード感」が必要な理由|#U30と考える

連載「U30と考えるソーシャルグッド」 ゲストは、日比谷クリニック副院長の加藤哲朗医師


国産ワクチンはどうして必要なの?


NYNJ田中:日本のワクチン開発が海外に比べて遅れていますが、そもそも国産ワクチンが必要な理由と、今後日本のワクチン開発がどうあるべきか教えてください。

加藤:日本でもワクチン開発が徐々に進んでるのは間違いないと思います。でも遅れてる感は否めないですね。これは、日本において、感染症のコントロールにワクチンの優先順位が高いと思ってる人が少なかったことが理由として挙げられると思います。あとはワクチンを作っても企業としての利益になりにくいことがあると思います。もちろんメーカーである以上利益がないことで積極性がなくなってしまうことは理解できますが、メーカーとして健康の増進に協力していただきたいという希望もあります。このメーカー側の利益という経済の部分と、接種する側のニーズが薄いという国民意識が、ワクチン接種の遅れの大きな要因と言えるでしょう。

海外では予防接種で防げるものは防ごう、より良いワクチンにしようとアップデートされています。インフルエンザワクチン一つをとっても、日本ではすでにあるものでよいだろうという考えがあるかもしれませんが、海外では新型インフルエンザウイルスがいつか流行するかもしれないという危機意識があり、現行のものより有効性が高いワクチンが開発できないか、継続的に研究開発がなされています。

それに対して日本はそもそもワクチン開発の基礎となる研究自体についても研究費、予算が少なく、またその研究に対する評価もされにくいという状況ですので、今回のようにある感染症が急に流行しても自国で一からワクチンや薬剤を開発する基礎体力がなく、いわば泥縄になってしまっているのです。

ファイザー
海外からワクチン供給に頼るしかない状況は、どのような影響をもたらすか(Shutterstock)

加藤(続き):菅首相が訪米してファイザーワクチンの追加供給を要請しましたが、海外のワクチンに頼るしかなく自力でワクチンを確保できないと、有事の際に道が閉ざされてしまう可能性もあります。自国でもワクチン開発をできるように常にスタンバイしておかないといけないことを今回の新型コロナで認識したのではないかと思います。

また、ワクチンは国力を示すと言われていて、中国は自国のワクチンを途上国に無料配布しています。自国で開発したワクチンがどれだけ多くの国で使われているかを示すことが外交の強みになりますし、もしまた新しいウイルスが流行した際にも対応できる下地になります。医療だけでなく、知識やノウハウとして、外交の面でも影響があることを日本も意識した方がいいのではないかと思います。
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文=続木明佳(NO YOUTH NO JAPAN)

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