世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

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堀内勉氏。日本興業銀行時代にバブル崩壊、そしてその後ゴールドマン・サックス証券を経て森ビル最高財務責任者(CFO)を務めた際、今度はリーマンショックに直撃されるという修羅場も経験し切り抜けた、金融と不動産の世界では知る人ぞ知る存在だ。

現在は多くの組織のアドバイザーなどを務めるほか、ビジネスパーソン、学者、研究者たちが交流し合いながら、哲学・思想、人間科学、自然科学などの幅広い見地から資本主義の本質を省察する「資本主義研究会」を主催、さらには書評サイト「HONZ」でレビュアーとしても活動する読書人であり碩学の徒である。

たび重なる金融危機に巻き込まれ、「ある意味で自分の存在をかけて、必死に読書をした」。また「正解のない問い」と対峙させられたときに差した一筋の光明はほかならぬ読書だった、という堀内氏。このたび上梓した『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』(日経BP刊)は約500ページの大著ながら刊行後たちまち重版、ビジネスパーソンにも注目されるヒット書籍となっている。本書執筆のきっかけについて堀内氏は、「読書の大切さを今のビジネスリーダーたちにも、是非、理解してもらいたいと思い、人類の歴史に残る名著についての本を出版することにした」と書く。

その堀内氏と、JT副会長岩井睦雄氏の対談が叶った。岩井氏はほかでもない、「日本専売公社」だったJTを多角化・国際化企業に生まれ変わらせた推進役の一人であり、「日本アスペン研究所」理事も務める人物だ。同研究所は「古典と対話」を通じ、産業界における新たなリーダーシップの醸成を目指す知的実験場として知られる。孤独な読書によってでなく「対話」によって学びを得ようとすると同時に、その学びを産業界における実際課題の解決に応用しようとする試みで注目されるコミュニティである。

実学とは一線を画す「リベラルアーツ」を学び、自らの軸とすることが実業の世界で人を生かす可能性ははたしてあるのか。あるいはその「軸」は、逆に障害になることもあり得るのか。


「べき論」が言える組織、そうでない組織


岩井睦雄氏(以下「岩井」):元々読書は好きでしたが、社会人になってからは実用的な本を読むことが多くなってしまいました。役員になった時に日本アスペン研究所(以下「アスペン」)のエグゼクティブセミナーに行ってみて、自分自身の根本的な「軸」になるものを定めることが大切だと気づき、それから古典をよく読むようになりました。

堀内勉氏(以下「堀内」):本を読んで自分なりの基軸を持つということが組織人として幸せなのかどうか、私にはよくわからないんですよ。少なくとも我々の時代は、「清濁併せ持つ人間じゃないと仕事はできない」などと言われて、まともな人はだんだんコースから外されていったじゃないですか。

文=上沼 祐樹 編集=石井節子

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