ビジネス

2021.05.09

元森ビルCFOとJT副会長が考えた。読書で得る「自分軸」は出世の薬か、毒か

Photo by Roman Kraft on Unsplash


堀内:私も時間ができたらもう一度アスペンに行ってみようかと思っていますが、相互の学びの場というのは、お互いの領域に、お互いが入っていくことではないでしょうか。現状を見ていると、ビジネスパーソンの方からは比較的、アカデミアに歩み寄ろうとしていると思います。一方で、大学の先生からビジネスパーソンに歩み寄る上ではまだ課題があるように思います。両者の間をきちんとつなぐことは、実はそれほど簡単ではないと感じています。

岩井:まさにアスペンで悩んでいることにすごく近いと思います。

堀内:岩井さんのようなビジネス側からのプロデューサーが出てきてエグゼクティブ教育を構築することができれば、とても面白いと思いますし、重要なことですよね。

「社会課題×ビジネス」の領域にこそ──


堀内:私はもう、これから先、それほど大きな野望はないんです。でも、今までの人生を振り返ってみると、仕事に時間を使いすぎてしまったと反省しています。日本のサラリーマンだったら、仕事対勉強の割合は、よくて95対5、普通だと100対0くらいの感じではないでしょうか。日本のビジネスパーソンには圧倒的に勉強が足りていないと感じています。

岩井さんは、日本の組織の中には「組織に対する忠誠心の貯金」みたいなものがあると思いませんか?

岩井:はい、深夜残業や飲み会、休日の上司とゴルフ、などで貯めるやつですね。

堀内:ええ。「貯金」の増やし方にはいろいろありますが、業績を上げるという正攻法以外に、身も心も全てを会社に捧げるといった方法も極めて有効で、それを「社内預金」として長年かけて積み立てていって、偉くなっていく。そして何十年もそういう、「現代の奴隷制」的な時間の使い方をしていると、普通ではありえないような超人的な体力を持った人しか読書、勉強の時間を捻出できません。

岩井:たしかにそうかもしれませんね。私は昨年、執行から外れましたので、少し時間の余裕が出てきました。当面はお互いに学び合えるような人材育成の場を作り、若い人を元気付けたいと思っています。

従来のビジネスやベンチャーだけではなく、「社会課題×ビジネス」の領域にも関心が出てきてたところです。堀内さんは、教授も務められている多摩大学の社会的投資研究所で、「インパクト・サロン(インパクト投資を含むソーシャルファイナンスに関するセミナー)」といった、新しい取り組みもしておられますよね。

堀内:人は何のために学ぶかと言えば、究極的には「人を幸せにする」「自分が幸せになる」「世の中を良くする」というためなのだと思います。そうした目的がないのにただ勉強することには意味がないと思っているんです。だからこそ、自分が学んだことをもっとビジネスに還元していきたいと思っています。ビジネスか勉強かという、「どちらかだけ」をやるというのでは意味がないんです。学びと仕事をフィフティ・フィフティくらいにして、交互に行き来し、双方に高め合うことを70歳くらいまでしていきたいですね。

文=上沼 祐樹 編集=石井節子

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