世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版


岩井:何が世のためになるのか、何がこれからの時代に必要になるのか、そういうことを考える時に、ベースとなる、いわば「人類の叡智」を本から汲み取って行動してほしいですね。

堀内:「周りに要領よく合わせていたら、いつの間にか偉くなってしまいました」というような人は、本を読む必要はないのだと思います。でも組織の力のメリット・デメリットをわきまえ、それにレバレッジをかけて世の中を良い方向に変えていこうというような志の高い人には本を読んでもらい、世の中を変えていく原動力にしてほしいですね。

今回、本書を執筆するさいに念頭に置いていたのが若い起業家の方々で、たとえば私が財務顧問をやっている国内最大級のIT教育プログラムを運営するライフイズテックの創業者の水野雄介さんのような人です。大きな理想はあるものの、若さゆえにまだまだ学びが足りない。そんな起業家にとって自分の基軸を持つことはすごく重要で、そのために読書はとても大切なのだと思います。

岩井:私も同感です。ただ、自分で起業するというのも一つの道ですが、大組織という、矛盾もたくさんある世界の中で「この会社を良くしたい」「世の中を良くしたい」「新しいものを生み出したい」と考える人たちもいます。

たとえば、企業の中に埋もれずに変化球を投げようとする、大企業の若手有志によるコミュニティ「One Japan」があります。まさにそういう志を持った若い人たちにも読書は必要で、思い込みや自らの限られた経験だけではなく、「本当に正しいことが何か」を常に考えるよすがにしてほしい。

堀内:私は、本物の教養とは、自分を捉えている枠組を自分でずらすことができる力だと思います。よく引用するのがマックス・ウェーバーの『支配の社会学』という本に出てくる「鉄の檻」という言葉です。元々、官僚制の硬直性を指す言葉ですが、自分を拘束している思考の枠組という意味でもあります。こうした「鉄の檻」、すなわち自らの思考の限界を知り、枠組をずらしたり、枠組の向こう側にあるものをイメージする能力を身につけることが教養なのだと思います。

特に、私たちを捉えている大きな枠組みとして資本主義というものがあります。私の著者『読書大全』の推薦文を書いてくれた山口周さんは「資本主義をハックしよう」と言っていますが、彼も、現代の資本主義を真っ向から否定しているわけではありません。資本主義の「限界」を理解した上で、この仕組みを利用し、変えていきましょうということを言っているのです。


『読書大全』(堀内勉著、日経BP刊)

大概のビジネスパーソンは会社という枠組から出られません。ましてや、組織の外にあり、それをも包含している資本主義という大きな枠組の限界を超えて考えることは、かなりハードルが高い作業になります。

アカデミアとビジネスが歩み寄る学び場を


堀内:本の歴史を紐解いてみると、2500位年前から人間の考えることって全然変わっていないことが分かります。対人関係、組織、家族、お金の問題など、人類が悩んでいるのはいつの時代でも同じこと。たとえば、マルクス・アウレーリウスの『自省録』を読んでいると、この日記は現代人が書いているのではないかと思うほどです。

文=上沼 祐樹 編集=石井節子

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