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真っ当に生きて、真っ当な価値観を持つために本を読む。こうした当たり前すぎることをちゃんとやっていくと、これまでの日本の大組織ではかえって生きづらくなっていったと思うのです。ですから岩井さんみたいな人がどうやって組織でサバイブしてきたのかとても興味があるのです。



岩井:私がまさに食品事業の責任者だった時期、2008年にいわゆる「中国ギョウザ事件(中国産の冷凍餃子から有機リン系農薬のメタミドホスが検出され、輸入元の『ジェイティフーズ』が自主回収を行った食中毒事件)」が起きました。この時に、一体何をもって「正しい」とするかを深く考えさせられたんですよね。

まさに読書は危機に際して「自分で考える」ための引き出しを増やすためにも有効なんです。著書でも触れられていますが、この点はどう考えておられますか?

堀内:繰り返しになりますが、組織に属するビジネスパーソンが真っ当に勉強して本を読み、真っ当な人間になることにどんな意味があるんだろうとずっと考えています。

基軸を持ち、きちんとした議論をする人間は、組織では面倒くさい奴だと思われてしまいます。もちろん、頭が良ければそれで良いということではありませんが、大学で優秀な成績を修めて、人格的にもキチンとしている人でも、そういった「面倒くさい」人は、組織でほとんど偉くならないように思います。

岩井:大方はそうでしょうね。幸いなことにJT は「べき論」を言える雰囲気なのですが、ある意味「若い」会社だからかもしれません。

JTを歴史的にみると、日露戦争を契機に国営組織として創設され、第二次世界大戦後も公的機関として運営されてきました。1985年に民営化され、それ以降「会社はこうあるべきじゃないか」という、べき論がよく交わされていたのですが、そういう議論をもちかけても、うるさい奴と見なされることはあまりなかったと思います。上の人達に度量があり、私も若い頃は「これからの時代はこうだ!」というべき論を上司にぶつけていました。

堀内:私は銀行にいたときにすごく感じていたのですが、組織にいると自分の言動がどうしても周りの人に引きずられてしまうんですよ。色々な人の立場や考えがあって、「こんな言い方をしたらこの人は絶対に怒ってしまうからやめておこう」とか何となく組織のロジックがわかってしまうんです。

それで組織に10年もいると、そういう「組織のゲームのルール」が完全に見えてしまう。どういう振る舞いをしたら偉くなれるのか、なれないのかという。そうなると、歌い方の固まった演歌歌手みたいなもので、コブシを回さないと歌えなくなる。オペラを歌ってみてもコブシが回ってしまうというような感じでしょうか。



「会社という思考的な枠組」をどうズラすか?


堀内:大組織の中にいた人が外に出てみると、社会的な信用と財務的な信用が桁違いに大きかったことに気づきます。個人だとそれらが全くないので、会社を辞めると非常に苦労する。組織に所属していることの信用をうまく利用しながらなおかつ高い理想を失わない人がいたら、もしかしたら社会を変える力になるのかもしれないと思います。

文=上沼 祐樹 編集=石井節子

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