研究チームは、木やその他の素材が圧縮されたときに微量の電気が放出される圧電気現象と呼ばれる性質を利用。大学の研究チームは菌類を使用し、バルサ材と呼ばれる木材の小片の細胞壁からリグニンと呼ばれる物質を除去して木片をはるかに圧縮しやすくした。これにより、圧電気の放出量が通常の50倍以上となった。
研究チームは脱リグニン処理を施した木材を使えば、生物医学的、あるいはその他の電気センサーを作ることや、木材を床板に挿入してその上を歩くことで発電し、電池に保管して照明や電化製品に電気を供給することが可能になると考えている。
ETHの研究者らは先日、スイス連邦材料試験研究所(EMPA)とともに科学誌「ACSナノ(ACS Nano)」に研究を発表した。
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の建築セクターによる二酸化炭素の排出量は、建設や建物自体からのいわゆる「間接的な」排出量も含めると総排出量の40%ほどを占めている。そのうち3分の2ほどは、ビルの存続期間の使用電力など、エネルギー消費によるものだ。
米国と欧州はどちらも、このセクターの問題解決を目指している。ジョー・バイデン米大統領は気候変動対策として、今後4年で400万棟のビルの改修と200万軒の住宅の耐候性工事を行うことに加え、家庭用品の電化を進め熱効率が高い窓を設置して住民の電気料金を削減することを目指している。
一方、欧州委員会(EC)は欧州連合(EU)のエネルギー関連の建物修繕スピードを倍増させ、2030年までに3500万棟のビルを改修することを目指している。
科学者や一部の起業家らは長年、圧電効果の利用について考えてきた。ロンドンを拠点とするスタートアップ、ペーブジェン(Pavegen)は、踏むことで発電する手のひらサイズの発電機を開発。同社はこれを使い、ロンドン・オックスフォード通りやインド・バンガロールなどに発電できる歩道を設置した。
また、このような装置を靴底に設置することも可能かもしれない。しかし、どちらのコンセプトもまだそれほど大規模には導入されていない。