世界全体で見直しが求められる「流産後のケア」

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流産の発生割合は、正式に診断された妊娠では8%から15%、すべての妊娠では30%と推定されている。英医学誌「ランセット」に2021年4月26日付けで掲載された報告書によると、世界では毎年2300万件の流産が発生している。

流産は一般に喪失として受け止められているが、その結果として生じる深い悲しみや苦しみは、他者から孤絶した体験になる場合がある。妊娠を誰かに知らせる前に流産し、ふいに深い悲しみに直面することもあるかもしれない。今回の報告書は、「流産は、あまりにも長いあいだ過小評価され、いとも簡単に片づけられるケースが多かった」とし、世界全体が流産後のケアを見直す必要があると述べている。そして、世界のどこであろうとも、流産した人に配慮した、明確なケア体制を整えるべきだと強調している。

ニュージーランドでは2021年3月末、流産や死産で子どもを失った母親とそのパートナーが数日間の有給休暇を取得できる法案が国会で可決された。こうした法整備がなされている国はごくわずかだ。イェール大学不妊治療センターに所属する、習慣流産プログラムの不妊治療専門医アマンダ・カレン(Amanda Kallen)は『ヴォーグ』誌に対し、こう述べている。「流産は、女性やその家族の心に深い傷を残し、人生を変えるほどの経験となる。そして、喪失感や悲しみをさらに複雑なものにしてしまう状況が存在する。つまり、流産した女性は今でも、汚名や恥に直面し得るし、そうした体験や喪失について語るべきではないとされがちだという状況だ」

ランセットの報告書は、流産した人たちへのケアは世界的に見直される必要があると述べ、こうした側面で医学的な進歩がみられないことは「衝撃的だ」と述べている。確かに、やむを得ない流産はあるが、つねにそうだというわけではない。「月経痛や更年期障害など女性が抱えるほかの生殖に関連する健康問題と同様に、流産の場合も、医療的な介入は最小限であるべきだという暗黙の了解が存在するが、それは思想的なものであり、科学的な根拠に基づいているわけではない」と報告書は続けている。

流産や死産に見舞われた人々の擁護と支援に取り組む英国の慈善団体「トミーズ(Tommy’s)」によると、流産の大半は、妊娠12週間目までの妊娠初期に発生しているという。これまでの研究で、流産後に社会的なつながりを持つことの重要性が明らかにされてきた。妊娠中期や後期に発生した流産でない限り、その経験について口を閉ざす傾向があることも浮き彫りになっている。ランセットの報告書はその要因として、医療機関での思いやりに欠けた扱いや、流産の原因を知らされないことを挙げている。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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