ダイアモンド・クリークの畑は、区画ごとに、グラヴェリー・メドウ(Gravelly Meadow)、レッド・ロック・テラス(Red Rock Terrace)、ヴォルカニック・ヒル(Volcanic Hill)、レイク(Lake)と名付けられ、各ワインにはそれぞれの区画の名称が表示されている。
グラヴェリー・メドウは、やや冷涼で、平坦な場所にあり、砂利が混じった茶色い土壌だ。醸造家のウェメイアーは、「ブドウの収穫時期は一番遅く、ブルーベリーといった青系果実やハーブのニュアンスが出ます」と説明する。
レッド・ロック・テラスは、ワイナリーの真下に位置する、北向きの急斜面の区画で、岩が混じる、鉄分を豊富に含んだ赤土の土壌だ。比較的暖かい場所で、ワインには、バラの花びらのような芳香さと赤系果実、スパイスといった特徴がでると言う。
ヴォルカニック・ヒルは、南向きの山腹部にある区画で、火山灰が堆積した火山性土壌だ。暖かい場所で、ブドウの収穫も一番早く、最もパワーがあり、フルボディで、長期熟成するワインを生み出す。ワインには、チェリーや黒スグリの黒系果実や甘草(リコリス)のニュアンスが感じられると言う。
Volcanic Hillの区画
新しい歴史の幕開け
2020年、家族経営のダイアモンド・クリークは、同じく家族経営のフランスのルゾー・ファミリーの手に渡った。ナパのアイコニックなワイナリーのM&Aとあって、このニュースは関係者たちを驚かせたが、実は、ブラウンスタイン夫妻とルゾー・ファミリーとは長年の交流があり、その結果としてのM&Aだった。
そして、ダイアモンド・クリークに植えられているカベルネの一部は、ルゾー・ファミリーが現在ボルドーに所有するシャトーに由来するものだったことが判明したというから、巡りあわせを感じる。
新しいオーナーとなり、畑・醸造所ともに刷新を計画している。醸造家も世代交代の時期を迎えていたことから、グラハム・ウェメイアーが参画した。
栽培・醸造を担当する、グラハム・ウェメイアー(Graham Wehmeier)氏
ウェメイアーはこう語る。「大学で醸造を学び、実践でブドウ栽培の経験も得て、この機会がめぐってきました。まさにドリーム・ジョブです。ナパの伝統的なワイナリーですが、改善できるところがたくさんあります。歴史や古木を守りながら、新しいものを取り入れ、新旧の適切なバランスを探したいです」
原点である、区画ごとの特徴を表現したワインはこのまま続ける予定だという。「それぞれの区画のワインには、際立った個性があります。各々のアイデンティを、よりピュアで正確に表現するワインを造りたいです」と、次世代を担う醸造家は意欲に満ちている。
島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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