──その一歩が、どうして「曲づくり」だったのでしょうか?
武井:このプロジェクトは、アスリートたちに、競技の成績だけじゃない「生き抜く力」を身につけてもらいたいという思いから始めたものです。
スポーツ以外の分野との「掛け算」をしかけて、アスリートたちが自分の新たな可能性に気付いたり、違う輝き方ができる場所を見つけたり、新しい道をみんながどんどん切り開いていけるようになったらいい。その1つ目が「音楽」とのコラボでした。
コロナ禍で失ってしまったものって、もしかしたら「誰かがつくってくれた場所」「用意してもらっていた職場」だったのかもしれない。だから、自分たちが輝ける場所を、自分たちの手でつくり、広げていく。もっといろいろな人に届けられる力をアスリート自身、ミュージシャン自身が持てば、大きなムーブメントになるんじゃないかなって。
今回の音楽とスポーツの掛け算で、交わったことのない現場の人たちやそれぞれのファンたちが、この楽曲をきっかけに盛り上がれればいい。川崎くんの歌詞で、アスリートたちの気持ちが奮い立ったら嬉しい。
そう考えて、音楽やスポーツを武器に世の中で戦っていく、お互いのそういう「ファイティング・スピリット」が混ざり合うような曲をつくってみたくて、川崎さんに声をかけて実現しました。
──そうしてつくられた楽曲が、今回のキャンペーンソング。サビに出てくる「戦士」という歌詞は、川崎さんらしくないような気もしましたが、曲に込めた思いとは?
川崎鷹也(以下、川崎):武井さんがおっしゃったように、これは「ファイトソング」です。実は最初、武井さんにも「ある意味、川崎鷹也っぽくない曲」と言われたんですけど、実は、僕自身のすごく奥底にある強い思いとか、歩んできた道が見えてくるようなものになったと確信しているんです。テイストは確かに川崎鷹也っぽくないかもですけど、自分では、本当に深いところで川崎鷹也らしさが書けたのではないかと。
普段ラブソングやバラードを書くときは、そのときの感情や、何気ない日々にフォーカスしているんですけど、今回は自分の人生を振り返ってつくりました。特に辛かったことや苦しかったこと、そういった轍(わだち)的な部分を確認して「俺も歯を食いしばってここまでやってきたんだな」と思える、自分に対しても誇れる曲を書きたかったから。
僕はうまいこと自分の感情表現ができないし、だからこそミュージシャンをやっているんですけど、曲を書く作業を通して初めて、自分で新たに気づくことがたくさんあるんです。この曲は、自分自身に対して気付かされたことがすごくたくさんありました。