需要が戻ってきているのは、オフィス探しを延期していた企業が多いこと、それらの潜在的テナントが、まだ空室が多いうちに少しでも好条件の物件を見つけようと考えていることが理由だろう。
事業用不動産を専門に扱うクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)によると、特にそうした傾向が強いのは、マンハッタン区だけでも未使用のオフィススペースが約613万平方メートルあるニューヨーク市だという。今年第1四半期のマンハッタン区のオフィスビルの空室率は、16.3%。6年前のおよそ2倍になっている。
商業用不動産の売買の仲介などを行うマーカス・アンド・ミリチャップ(Marcus & Millichap)のニューヨーク・オフィスのブローカー、エリック・アントンは、現在の状況について、「間違いなく借り手市場だ」と話す。長期の賃貸契約を結んだことで、当初1年半の家賃が免除された上、他にも複数の特典が与えられた企業もあるという。
また、ニューヨークの需要の回復を先導しているのは、オフィスを探している企業の3分の1を占める金融業界だ。次いで潜在入居者が多いのは、13%を占めるテクノロジー業界となっている。ただ、ニューヨークで需要のリバウンドがみられるのは主に、一等地にある高級物件だという。
一方、こうした前向きな状況の中でも、専門家らは全米で需要の回復がみられるのは、少なくとも数年先になるとの見方を示している。前出のマジエロは、「普通の状況に戻るのは、おそらく2023年末か、2024年初めだろう」と述べている。