国交省「プラトー」の衝撃 3D都市モデルはまちづくりをどう変えるか

(c)Project PLATEAU


さらに、現実空間と同等の情報をもつ3D都市モデルを使うことで、都市開発・まちづくりの高度なシミュレーションが可能となる。この道路を狭くして広場をつくった場合、どういった人の流れが予想できるのか? はたまた中心市街地が縮小しているがそれに対する有効な政策はどのようなものか? これまでは限られたデータと経験則に則って行っていたまちづくりを、より綿密に、科学的に、行えるようになる。

VR上の人が見える? デジタルツインが可能にする新サービスも


今年3月からProject PLATEAUの「G空間情報センター」上では、オープンデータとして順次3D都市モデルが公開され、誰でも自由にデータを使用することができるようになっている。とはいえ、まちづくりに直接の関わりがないようにも思える一般の人は、どのようにこれを活用することができるのか。内山はこう語る。

「3D都市モデルの優れたビジュアライズ機能を活用すれば、まちの課題や将来像について、具体的なビジョンを共有することができます。あるいはそれを見た市民がこんな風にまちを変えていったらいいのではと、市民のアイデアをまちづくりに取り込むことができるようになる。こうした市民のまちづくりへの参加のツールとして使えるのではないかなと考えています」

3D都市モデルがオープンデータ化されるとまもなく、SNS上では「富士山見えるマップ」や「AR初音ミク」など、自らのアイデアを掛け合わせた創作物が披露されるようになった。


「例えばARで建物と建物の間に初音ミクを出すには、建物同士の位置情報や大きさがわからないとできない。その位置合わせにPLATEAUを使うという、新しい使い方ですよね。また、3D都市モデルは形状の面で優れていますが、実はそこに入っているデータも重要なので、それを活用してくれるソリューションがもっと生まれてほしいなと思います」

Project PLATEAUは3D都市モデルを活用した、民間企業とのサービス開発にも力を入れている。例えばARやVRによる空間コンピューティング技術を用いたサービスを企画するスタートアップ「MESON(メザン)」とは、渋谷を舞台にしたAR/VR融合の周遊体験の実証実験を行っている。

ARとVRの融合とは要するに、3D都市モデルがあるサイバー空間上にVRでログインするユーザーと、現実世界のARユーザーとがあたかも同じ渋谷の街にいるかのように、両者を横断してコミュニケーションを発生させることができるのだ。

VRユーザーはVR空間でアバターを動かして渋谷の街を歩き、対して実際の渋谷にいる人はARグラスやスマホをかざすと、VRでログインしている人が街を歩いているように見えるのだ。ARユーザーとVR上のユーザーはボイスチャットで会話することもできる。

AR/VR
PLATEAUはリアルとバーチャルの繋ぎ役としての役目も担っていくかもしれない
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文=河村優

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