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2021.05.05

食料自給率が低いシンガポール 代替肉企業の積極的な誘致目指す

fiftymm99 / Getty Images

シンガポールは、新たな投資により海外企業の進出を促すことで世界の代替肉産業の中心地を構築しようと競っている。

同国は現在、食品の90%以上を輸入に頼っている。シンガポール政府は自律的な食品エコシステムの構築が急務であることに気づいて以降、代替タンパク質の開発に注目していた。

2030年までに栄養必要量の30%を国内で生産することを目指す同国の最近の取り組みにより、スイスの食品処理ソリューション企業ブーラー(Bühler)や香料メーカーのジボダン(Givaudan)が、同国に共同で「プロテイン・イノベーション・センター」を開設している。

また、シンガポールの規制当局は培養肉を世界で初めて承認し、植物由来の卵代替品などを手がける米カリフォルニア州イート・ジャスト(Eat Just)は同国で「培養鶏肉」の発売にこぎ着けた。

現在、代替肉の有望な未来に賭ける国際的な起業家らはますますシンガポールに進出している。食品技術スタートアップのネクスト・ジェン・フーズ(Next Gen Foods)はシードラウンドで約1000万ドル(約11億円)の資金を調達し、動物由来食品を一切使用しないビーガンチキン「ティンドル(TiNDLE)」の現地レストランへの提供を最近始めている。

アジアでの大きな賭け


植物由来食品の分野で最大の市場はいまだに欧米だ。ネクスト・ジェンも最終的には欧米で販売されるようになるだろうが、本社がシンガポールに置かれていることは、同社が急速に成長するアジア市場に大きく賭けていることを示している。

創業者のティモ・レッカー最高経営責任者(CEO)は「アジアでは全てが人間関係に基づいている」と語る。「シンガポールには国際的な人材プールがあり、投資や政府の支援も提供され近隣市場も近く、強いエコシステムがあった」

ネクスト・ジェンの商品はタンパク質や食物繊維を豊富に含み、遺伝子組み換え食品ではない。またナトリウムと飽和脂肪の量は競合商品に比べて低い。

米メジャーリーグサッカー(MLS)インテル・マイアミと最近契約した英サッカー選手キーラン・ギブスもネクスト・ジェンに投資している。ギブスは、植物由来食品カテゴリーの急成長の要因の一つが、食肉生産が地球に与える悪影響にあると指摘した。

「私はティンドルを食べたことがあり、これが最大のゲームチェンジャーとなった」とギブス。「現在の課題は、従来の肉製品に対してより多くの植物由来食品を提供することだと思う。ネクスト・ジェンはこの点で先手を打っている」

ギブスは、代替肉の使用がこれから増え続け、ネクスト・ジェンのような企業は一般市民の肉の消費に対する見方を次第に変えていくと考えている。
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翻訳・編集=出田静

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