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2021.05.05

ランドローバー「常識を壊す」挑戦 なぜ999段の石段を駆け上ったのか

999段の石段を駆け上るランドローバーのチャレンジ(YouTubeより)


2020年のカンファレンスで表彰された米国のミニカーブランド「ホットウィール」も、チャレンジを大切にしている。

ホットウィール
世界で一番売れているおもちゃ「ホットウィール」(ザ・ギャザリングのスライドより)

ホットウィールは、米国のミニカーブランドである。1968年に販売を開始。これまでに製造した数は80億個を突破している。今では日本国内の玩具店でも、当たり前のように目にする。

失敗を成功の機会にする「グロースマインドセット」


ホットウィールが支持を集める理由の一つに、チャレンジという姿勢がある。同ブランドのチャレンジの中心に位置する考え方が「グロースマインドセット」(=Growth Mindset、成長型マインドセット)である。

「フィクストマインドセット」(=Fixed mindset、固定型マインドセット)とよく対比して使われるグロースマインドセット。その最大のポイントは、失敗を自分たちの成功の機会と捉えることにある。一方、フィクストマインドセットは、失敗を自分たちの能力の限界と捉える。ホットウィールは好んで新しいことに取り組むグロースマインドセットによって、様々なイベントや企画を打ち出し続けている。

チャレンジは、ホットウィール創業のストーリーに由来するものだ。ホットウィールを製造するマテル社の創業者は、ルースとエリオット・ハンドラーの2人。ルースは世界的に知られる人形「バービー」を製造していた。一方のエリオットは、少年向けのよりよいおもちゃを作りたいという夢を持っていた。ある日、彼はついにチャレンジを始める。ロケット科学者とカーエンジニアの助けを得て、おもちゃのデザインに着手したのだ。

ホットウィール担当者のプレゼン
2020年に開かれたザ・ギャザリングでプレゼンするホットウィールの担当者(筆者撮影)

そして、子どもたちの創造力を刺激する次なる商品「ホットウィール」が誕生した。そこから50年以上もの間、ホットウィールはパフォーマンスとデザインについて「チャレンジ」という姿勢を貫き続けている。

創業のストーリーと、ブランドのアイデンティティーや文化がつながっていることほど強いものはない。結果、顧客のエンゲージメントを高めるとともに、強固なブランドを生む。

先行き不透明な時代に、ブランドの前向きなチャレンジは歓迎される。チャレンジが困難であればあるほど、また意義深いものであればあるほど、オーディエンスは信者へと近づくのである。


連載:世界を歩いて見つけたマーケティングのヒント
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文=田中森士

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